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きみがすき

第19章 *ジュウハチ*



もう、すっかり暗くなった空。
車の窓は雨で濡れて景色は良く見えないけど、色とりどりのネオンや街灯は、雨に滲んでよりいっそう綺麗に見えた。


なんて、ゆっくり外を見てしまうのは


そう、車内の2人が無言だから…


そりゃ、俺が話かければ良い話なんだけど、雨の日の運転って特に危ないって言うじゃん?
俺が話しかけて事故でも起こしたら大変だし…


わかってる…、言い訳だよね。


だってなんだか、自信が無くなっちゃって。
や、もともと自信なんてなかったけど、さっきみたいに笑ってくれたから、もしかしたらって淡い期待をね。しちゃってた自分。


チラッとこっそり見た横顔。
時々、対向車のライトで照らされて顔が見えるけど、ずっと真顔だもん。
まぁ逆に笑ってても変だけど…


ねぇ返事くれるんだよね?


ねぇなんか喋ってよ。


ねぇ不安だよ。俺…





でも、その沈黙を破ったのは俺で。

「…あれ?」


相「ん?」


「…相葉ちゃんの家に行くんだよね?」


相「…うん。そうだよ。」

だよね。

でもさ、こっちには…

「何処か…寄るの?」


相「寄らないよ。」

じゃぁなんで…?

そう思って相葉ちゃんを見ると、相葉ちゃんも一瞬俺を見て、少し、気まずそうな顔をした。

なんで…?

「ねぇ相葉ちゃんち、こっちじゃないよね?」


相「…こっちだよ。」

え?

え?あれ?俺がおかしい?
車に乗らないから地理にはそんなに詳しくないけど、相葉ちゃんちはちゃんと覚えてる。

…でも、今車が向かってるのは、反対方向と言っても良いくらいの方角。



もしかして…


「引っ越し…したの?」


相「……うん。」
少し間を置いて返事が返ってきた。


あぁそうなんだ。だからね。
いや、別に、ちょっと驚いただけ。引っ越しするのは自由だしね。





…でも、なんで今?

俺、ずっと連絡待ってたんだよ。

この数週間、ずっとずっと待ってたんだよ。

俺のこと、真剣に考えてくれるって言ったから。

なのに…引っ越しって…

…そりゃ更新時期だったとか、仕方ない理由があったかも知れないけど…


…なんで、そこに俺を連れてくの?


振ったとき…俺が店で泣いたら恥ずかしいから?


だったら車でいいじゃん。


わかんない…


なにそれ…


なんだよ…


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