きみがすき
第19章 *ジュウハチ*
「とめて。」
相「え?」
「車、とめて。」
相「え?な、なんで?」
相葉ちゃんの驚いて、そして焦った声。
「俺、相葉ちゃんち行かない。」
わかんない。
相「…どうしたの?」
そして心配そうな声。
「行きたくないんだってば!」
思わず大きくなった言葉。
ゆっくり速度を落とした車は、路肩に停まった。
カチカチとハザードランプの音と、雨が窓を打ち付ける音だけが残る。
相「…大ちゃん…」
わかんない。
わかんないよ。
なんで、何も言ってくれないの?
下がった視線の先には、無意識のうちにぎゅっとズボンを握り締めている手が見えた。
わかんない。
わかんない。
振るんだったら…さっさと振ればいいのに
何も言ってくれないとわかんないよ。
…わかんない。
…わかんない…
…わか、んない……
『大ちゃんの考えてること、俺にはわからないよ。』
…
…そうだ
…ダメじゃん
俺、何も変わってない
ちゃんと、言葉にしないと…
思ったことを伝えないと…
恐がってる場合じゃない…
…でも…振られたら…
『その人のこと、諦めきれるの?』
ううん。諦めないよ。
もう諦めないって、頑張って振り向いてもらうって、そう決めたんだ。
ぎゅっと拳に力を入れ、ふぅと息を吐いた。と
「つっ!」
スッと頬っぺたに冷たい感触が当る。
びっくりしてその方を見ると、真っ直ぐ見つめる瞳とぶつかった。
相「あ…ごめん、…また…泣かせちゃったのかと、思って…」
「…泣、いてないよ…」
いまだに触れたままの冷たい指。
少しだけ震えているのは…
なんで?
相「ごめん。俺、何も言わずに……不安にさせたよね。」
そう言うと、俺から視線を外し、頬っぺたにある手も、ゆっくりと離れていく。
でもその相葉ちゃんの手をとり、また俺の頬っぺたに戻した。
今度は、相葉ちゃんが驚いて俺を見る。
「不安…だった。何も、言ってくれないから…」
相「…ごめん…」
「でも、俺も何も聞かなかったから……だから、ごめん。」
その冷たい手を暖めるようにぎゅっと握り直す。
「…相葉ちゃんの、気持ちを教えて。
俺、どんな答えでも受け入れるから。
大丈夫…だから。」
うん…大丈夫。
…大丈夫だよ。