きみがすき
第20章 *きみがすき*
聴こえるのは、暖房の音。
カップから温かそうにあがっていた湯気は、もう見えない。
相「ずっと、帰ってくるんじゃないかなって思ってたんだよね。」
そう、天井を見上げる。
頭を過ったのは《相葉》と掲げた表札。
…ずっと信じて…信じようとして…待ってたんだね…
相「大ちゃん…」
少し、驚いた声をあげたのは、俺が相葉ちゃんを抱き締めたから。
…なんて声をかけたら良いかわからない
これまで…どんな気持ちで、どんな思いで、あの家で…過ごしてきたんだろう
すきだった人に…あんな……
…なんで、笑ってるの?
…俺に…何ができる…?
ただただ…俺はここにいるから。って思いを込めて、抱き締めることしかできない…
と、ゆっくりと俺の腰に回された腕。
相「俺が、前に進めたのは大ちゃんがいたからなんだよ。…大ちゃんに出会えたからなんだ。」
「え……俺…?」
相「うん。こんな俺をすきだって言ってくれて、一生懸命に気持ちを伝えてくれて…
だから、俺は変わることができたんだ。」
少しだけ上にある俺の顔を見上げた相葉ちゃんは、やっぱり笑ってて。
「だから…笑えるの…?」
相「笑えるんじゃなくて、笑えたんだよ。」
「…笑えた?」
相「うん。ほんとはね、この話をするのちょっと怖かったんだ。初めて人に話すから。
でも、自分でもびっくりするくらい普通に話せたし、笑えちゃった。」
大ちゃんだからだよ。と嬉しそうに笑う。
俺のすきな笑顔。
相「…でも…驚かせちゃったよね。」
その言葉に、こくんと正直に頷く。
「…俺に何ができるのかなって…
けど…考えたけど、俺の頭じゃ何ができるかわからなくて…」
相「大ちゃん…」
「でも、これだけははっきり言える。
相葉ちゃんの、笑顔を守りたい。
俺、相葉ちゃんの笑顔が大すきなの。
だから、その笑顔は俺が一生守るから。」
相「…」
ゆっくりと、下を向いてしまった相葉ちゃん。
…あ…なんか、間違ったこと言っちゃった…?
相「なにそれ…ちょーかっこいいじゃんか」
「え?」
相「心臓に刺さった。」
そう言って、顔を上げた相葉ちゃんの瞳は、光に照らされてゆらゆらと揺れる。
相「大ちゃんは、俺を救ってくれたヒーローだ。」
そして、眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。