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きみがすき

第20章 *きみがすき*



太い鎖のような、今にも切れそうな細い糸のような。相葉ちゃんを縛っていたもの。


相葉ちゃんは、俺と出会えたからって言ってくれるけど、きっと相葉ちゃん自身で変えたんじゃないかな。

だって俺、何もしてない。
一方的に気持ち伝えただけだ。


「…ヒーロー?」


相「うん。大ちゃんの言葉で、存在で、俺はこうやって次に進めたんだよ。だから正義のスーパーヒーロー。」

さっきまで、腰に回されていた手がいつのまにか俺の頬っぺたを触る。

そして、その目は、俺でもわかっちゃうくらい、これでもかって嬉しそうで……愛おしそうで…


相葉ちゃんの言ってることが、本当なんだなって。そう思わせてくれた。


俺…何かできてたのかな…


…てかさ…


もう見てらんないよ。


ので、


横を向く。


相「あー、また逃げた(笑)」
あの時のように、くすくすと笑う相葉ちゃん。

「…あの、紅茶のおかわりを…」


相「んー?」

いや、んー?じゃなくて!

尚、俺の襟足から首にかけて手は添えられてて、更に逃げたくても腰にはもう片方の手。

相「大ちゃん。」


「はい。」


相「こっち向いて?」


「や、今はちょっと…」


相「もぉ。…じゃぁこのまま聞いて。

大ちゃん。俺ね、大ちゃんをすきになって、自分でも知らないの自分を知ったの。

甘えたくなったり、ヤキモチ妬いたり、ちょっと意地悪したくなったり、こうやって…触れたくてたまらなかったり。

全部、全部大ちゃんに、恋をしたからだよ。

こんな気持ちを、教えてくれて…ありがとう。」




……なんだよ。


なんだよいきなり。

そんな流れじゃなかったじゃん。

狡い…


ゆっくりと視線を戻すと、少しだけ色素の薄い瞳と目が合う。

吸い込まれそうだよ。

ゆっくりと引かれ、ゆっくりと距離が縮まる。


「相葉ちゃんに会えて…良かった。」

貴方をすきになって良かった。


唇が触れる寸前。
くふ。と相葉ちゃんが笑った。



3回目のキスは


今までのとは全然違ってて


じゃれ合うように、でも少し大人で


優しく、何度も落とされたキスは


ちょっとだけ…しょっぱくて


でも とびきり甘い


今なら本当にヒーローにでもなんでもなれちゃうんじゃないかなって、そう思わせるような


そんな、キスだった。

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