きみがすき
第26章 *さん*
聞きたい事。ってのは…
の前に
「これ。御馳走様です。」
缶コーヒーを持ち上げて今更の今更お礼を言う。
櫻「ふっ。飲まないから嫌いなのかと思ったよ。」良かった。と笑う。
「嫌いじゃないですよ。中毒並み。」
櫻「…マジか。それは逆にセレクト間違ったな。」
と、全然悪いとは思ってない顔。
「ふふ。じゃ遠慮なく頂きます。」
カリカリとプルタブを爪で引っ掛け、カシュ。と缶を開ける。
もう夜中と言って良い時間帯だと言うのに、櫻井さんが選んでくれたのは、俺好みのブラックコーヒー。
きっと酔い覚ましのためだろう。
こくっ。と少しぬるくなってしまった液体を一口飲めば、口に馴染んだ苦味。
うん。頭がすっきりするわ。
そして
ふぅ。と一つ息を吐き櫻井さんに問いかけた。
「さっき、何を考えてたんですか?」
と。
櫻「……さっき?」
「そう、さっき。
こーーんな顔。してましたよ?」
眉間に皺を寄せて、難しい顔を真似する。
櫻「え?なにその顔?俺?俺の真似?」
「そうですよ。智さん見ながら、こーーんな こーーーんな顔。」
と益々、皺を深めてみせる。
きっと最早しわしわの梅干し。のイメージ。
櫻「うわぁ俺、ひでー顔だな(笑)ちょーブスぅ。」
かかか。と爆笑し腹を抱える。
…
……
おい、そこまで言ったら俺に失礼じゃね?
てか櫻井さん。意外と笑い上戸なんだね。
尚も、ぐふっ。くくく。と笑っている櫻井さん。
仕事のし過ぎなんじゃない?
櫻「っあー笑った笑った。いや やっぱ面白いわ二宮くん。」
と、やっと笑いを落ち着かせ、でもにやけた唇のままコーヒーを含んだ。
そして呼吸を落ち着かせてから
櫻「さっき。ね。
そう…それをさ、二宮くんと話せたらなって思ってさ。」
と、まだ笑いが抜けきれない瞳で俺を見た。
「俺と…?」
櫻「そ。」
「…なにを?」
なんか…悩ませるようなこと俺した?
と、櫻井さんを見れば、さっきの瞳はもう無くて…そこには真剣な瞳。
え?俺怒られる感じ?
何故だか急にそんな気がして、反射的に少し身を引く…
櫻「智くん。何があったのかなって。
二宮くんは知ってる?」
俺の思考とは全く違う、
そんな真剣な声が返ってきた。