テキストサイズ

きみがすき

第26章 *さん*



大きく肩を上下させ、まだ呼吸が落ち着かない相葉さんはしゃがみこんだまま
智さんが寝ているベンチに手をかけ、顔を伏せている。


…もぉ
わけわかんない。

聞きたい事はあるけど
取りあえずは。と自分の鞄から予備用のハンカチを取り出し

「はい。相葉さん。
汗、拭きなよ。」
と、声を掛けた。


相「………」



「相葉さん?」


相「……あ…ありがと…。」

そう、ぼそっと言って少しだけ上げた顔。
その顔を見て、ぎょっ。とした。


は?!泣いて…る?


相「…借りるね。」
と、俺が差し出してたハンカチを取り、また下を向いてしまった。

え…

…な…なんで?

え?汗?…見間違い?

いやでも…

「……相葉さん…なんで、来てくれたの?」

なんだかもう、詰め寄る気も攻め立てる気も一気に消失してしまった俺は、こんなに汗だくになってまで来てくれた相葉さんの事が、逆に心配になってしまった。


相「……はぁ…あっちぃ…
うわ。俺、ちょー汗じゃん(笑)」

胸元のシャツを掴みパタパタと仰ぎながら
今度は俺に向かって上げた顔。
もう…いつもの相葉さんの笑顔。

瞳…に涙はない。

けど、目の縁は…うっすらとあかい。


見間違いじゃない。


「ねぇ…どうしたの?」


相「えー…?どうしたの?じゃないよぉ。
ニノが、留守電残すからじゃん~。」

…へ?

「留守電?」


相「うん。」

え?俺?

「留守電なんて残してないけど?」


相「入ってた。
俺、びっくりしちゃったよ。あんな留守電。」

全く身に覚えがない。

「あんな?」


相「あんな。」

…どんな?


『(メッセージを再生します)
あー…出ないなぁ…
…っは?!え?智さん!?何して…駄目!おいバカ離してっ…!
(ガチャ…ガチャンッ…バッリーン…!!)
っ智さん!?やめてっ!待って危ない!ちょっとやめろって、おい!手を離せって…プッ。
(メッセージは以上です)』

(↑あんな)


相「ね?」

…あれ?

「おかしいなぁ俺の声だ。」
と、とぼけてみたけれども。

相「誘拐されたのかと思った(笑)」


櫻「…ぶっ…」


「櫻井さん…」
口。押さえてても漏れてますよ。

櫻「ぐふっ…ぁ…いやごめん。笑っちゃ駄目なのはわかってんだけど…くっ…ツボった…く…くふっ…」


…何も言えん

ストーリーメニュー

TOPTOPへ