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きみがすき

第27章 *よん*

*櫻井*




人の通りも疎ら。
時折、遠くから車のエンジン音が聴こえる。

もう真夜中だ。



やってしまった…

大人気ない態度を取ったのは俺だ。

気を使わせた。

そして…不安にさせた。



智くんは…
相葉くんが振った手に、きっと反射的に振り返してしまった手が、中途半端に胸元で止まっている。


「……あ…俺、タクシー…」

大「翔くん。」

っ…

俺の言葉を遮るようにしっかりと、でも穏やかな声が俺の耳に届く。



……

大「翔くん。」

顔を向けない俺に再度掛けられた声。
さっきよりも強い。


観念して…ゆっくりと智くんを見れば
少し…怒っているような、でも不安そうな瞳と目が合う。


「…」
俺は…だんまり。

んで
視線を下げる。


と、はぁ…と小さく息を吐き、すっ。と吸う音。

大「避けられてる理由がわからない。」

その言葉に思わず視線を上げると、真剣な真っ直ぐな瞳。


「…は?避けてなんか」

大「避けてんじゃん。」

一蹴。

大「俺、なんかした?考えたけどわからない。ねぇなんかしてたなら言ってよ。」




……

そりゃそうだ。
だって智くんは…何も悪くない。

これは、俺の問題だ。

だから…
言えない。

言いたくない。


「避けてるような態度に見えてたなら悪かった。少し、仕事で疲れてたんだと思う。ごめん。」
と謝った。

けど…
智くんの眉間に皺が寄る。

「…相葉くんにも悪いことした。彼にも謝るから。」


大「…」


「家まで送るよ…俺、タクシー捕まえて…」

大「いい。」
また、遮られた言葉。

「…電車もうねーよ?」


大「いい。帰りたきゃ一人で帰れば?」


「…。」

…はっ

なんだよ怒んなよ。

俺のことなんてほっとけよ。

「人の気も知らないで…」
あっ。と思った時には、口をついて出ていた言葉。慌てて飲み込んだが…

大「だから聞いてんでしょ。」


…ちゃんと聞こえてますよね。

「ぁ…今のは、売り言葉に買い言葉って言うか…」


大「ぐだぐだ煩い。」



…わかってるよ。
自分でも浮気がバレても尚も認めない、ダサい奴みたいだって…

と、

あのさぁ。と溜め息混じりの呆れた声。そして、その後に続いた言葉に、息が止まった。





大「翔くんって、俺のことすきなの?」

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