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きみがすき

第29章 *ろく*

*松本*




相「うわ。暑っ。」

カチャ。と開けたドアの向こう。
もわっとした熱気が肌を包む。

「扇風機、扇風機」と雅紀がカチ。とスイッチを押した。
強設定の風が生暑い空気を廊下へと押し出す。

相「潤ー。この部屋にもエアコン欲しいー。」


「気持ちはわかるけどな。この部屋には設置は無理だし、予算がない。」

俺達の荷物を置いたり、着替えたりする部屋。そう休憩室。

広さにしたら…ほんと畳2.3畳くらいの部屋だ。
なんで休憩室って言うのかは、まぁここの管理人がそう呼んでて、自然と休憩室って呼ぶようになった。

夏場は暑いし、冬場は寒いし。休憩には不向きの部屋だ。

相「だよねー。…あ。」


「ん?どうした?」


相「んふ。見て。大ちゃん鯛釣ったんだって。」
そう言って、ニコニコと携帯画面を俺に向けた。

そこには
鯛。とピースサインをした手が写し出されている。

「鯛、でかいね。大野さんって釣りすんの?」

手は大野さんのだろう。
つーか、大野さんって女の人並みに手が綺麗だな。

相「うん。結構本格的な趣味みたいで。
そっかぁ今日は釣りに行ってたんだ。いつもの海に行ったのかなぁ。」
そんな事を言いながら、また画面を自分に戻して、微笑む。



「…雅紀達って会えてる?」


相「ん?あーあんま会えてない。
この間、お店に来てくれた時が最後。」
コト。と携帯をロッカーの中に置いて、よっ。とシャツを脱ぐ。

服や髪に臭いが移るから、仕事終わりに着替えないと車や家の中が大変なことになる。

「そっか…。」
と、俺も続いてシャツを脱いだ。


雅紀と大野さん。
この2人は…
仲良さそうに見えて、なんだかぎこちない。

あまりお互いの事を知る期間なく付き合った。そういうもあるのかな…
遠慮…?今はお互いの事を知る時期?段々と、このぎこちなさは解消されていくのだろうか。

そうなら良いけど。



……

なんか違う気がする。


「雅紀。」


相「んー?何?」
俺に向けられる笑顔。



……まださ

相「?潤?」


「あ、いや。
今度さ、すぐにじゃないんだけど、スタッフを増やそうかなって考えてるんだけど、雅紀はどう思う?」


雅紀の中に、あの女(ひと)がいるんかな…。

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