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きみがすき

第29章 *ろく*

*大野*




イチ「おーちゃん、いい?」


「あー…もうちっと深く刺した方がいいよ。…そう。そんな感じ。」


イチ「へぇ…で?これを投げればいいの?」


「そ。あの辺り目指して投げてみ。」
と、俺は指で広い海を指した。

イチ「あの辺り?」


「あの辺り。」


イチ「どの辺り?」


「あの辺だよ。指、指してるとこ。わかんだろ。」


イチ「えー?おーちゃん説明下手ー。」

なんだと?

さらっとそんな事を言いつつイチは、ひょいっ。と釣竿を振った。

ちゃぽん。という音は、波音にかき消されたけど、俺があの辺。と言った所に丁度落ちた。

「…上手いじゃん。」


イチ「まじ?やった!
俺ね!褒められて伸びるタイプ♪」

キラキラした笑顔を俺に見せて、嬉しそう。

そんな彼の服は相変わらず海に似合わない、ロック?パンク?…取り合えず、ゴツゴツしたアクセサリーに、穴の空いた服を着ている。

この炎天下の中、そんなアクセサリー着けてて熱くなって火傷しないのだろうか。
…なんて考えちゃうのは、もうおじさんなのかな。

イチ「でっかい魚釣れねぇかなぁ。」
ニコニコと、海を見つめる。

俺はその横顔を覗き見る。




……

ホントだ。

似てはない。
けど、よくよく見れば横顔は似てるかも。

それに、笑った感じだったり、話したときのちょっとした仕草や口調。
は、似てる

翔くん、すごいね。


***

遡ること、1週間前。
俺が翔くんに鯛をご馳走した時だ。

変わらずの怒りんぼキャラで、俺のモヤモヤを取り除いてくれた翔くん。

そんな翔くんが、急に変顔をして

そして
櫻「なぁ智くん。なんで恋人なんだろうな。」
と、聞いてきた。

「…俺と相葉ちゃん?」


櫻「いやいや違ぇーよ。あ、違くないか。
…ま、いいや。」


「何言ってるの?もう酔ったの?」
あ、俺は飲んでないよ。ニノに禁止されたから。偉いでしょ?

櫻「バイバイキンくんだよ。なんで恋人?って聞いてきたのかなって。
なんか違和感あったんだよね。」



??

ますますわからない。

櫻「だーかーらー普通さ、世間一般的には、メールの相手が誰か聞くときって『友達?』の他に、男にだったら『彼女?』。女にだったら『彼氏?』って聞き方しない?ってこと。」

と、ハテナな俺に、そう説明をしてくれた。

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