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きみがすき

第29章 *ろく*



「…そうかもしんないけど、翔くんだってさっき恋人って言ったじゃん。」


櫻「だって俺は、智くんが誰と付き合ってるか知ってるから。」


「?うん。」


櫻「相葉くんと付き合ってる智くんに対して、俺が『彼女』とは言わないし、だからって男に『彼氏』って言うのもなって。だから俺は『恋人』って言ったんだよ。」


「ふぅん。……え?じゃぁ…それって…」


櫻「そ。バイバイキンくんは智くんの付き合っている相手…までとはいかなくとも、少なくとも男だって知っている。可能性が高い。」

そう言って、翔くんは俺にビシッ。と指を指した。

「…なんで?俺、初対面だよ?
イチトくんだって、俺のこと知らない様子だったよ?」

あれは演技だったってこと?

櫻「まぁ…俺は実際その場にいたわけじゃないから、あくまでも俺の考えだけど。
けど、あの海でイチトくんが待っていた相手が、必ずしも顔を知っている相手だったとは限らない。つーことだな。」


「…それが俺だったってこと?」

翔くんは、さぁね。と笑って「あくまでも、俺の考え。」とまた付け加えた。



***


イチ「♪♪~♪♪~♪」

隣から聞こえてきた鼻唄。

流石に選曲は一緒じゃないね。
誰の歌だろう?俺の知らない歌だ。


『因みに、俺の豊富な人生経験と素晴らしい頭脳からするとだ。
人は、本当に言いたいことは最後か、最後の方に持ってくる傾向にある。』

翔くんはそう言った。


最後…最後の方…

『金。持ってそうだから付き合いました。使えそうだから、付き合いました。……
………おーちゃんは、違うよね?』

イチが言ったこと。





また、こうして会うまでは確信は無かった。

1週間前は、もう会うこともない人だと思ってたし、服の印象が強すぎて、顔だったり、仕草だったりはそんなに見てなかったし。


俺にとっては見慣れたいつもの海。

イチ「おーちゃん。久しぶりー。」

まるで、そうするのが当たり前かのように声をかけられた。


んで、

約束通り、釣りを教えてあげてる。


イチ「おーちゃん。釣れないよ?」


「まだ15分もたってないじゃん。
魚だってそう易々と釣られてたまるかよ。」


イチ「そっか。魚も必死か。
釣りって奥が深いねぇ。」
しみじみと言うイチ。



……

深みを感じるのが早い。

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