きみがすき
第30章 *なな*
ノロケてはないけどさ。
でも、そう聞こえちゃうのは…
「素敵な人だよ。イチのお兄さんは。」
だからだよ。
イチ「……幸せそうな顔。してんね。」
と、また呆れた顔をして、ふん。と鼻から息を吐いた。
「そう?」
イチ「どこで…」
「え?」
イチ「どこでバレた?」
あぁ
「ふふ。どこだろうね?」
なーんて。
イチ「なんだそりゃ…まぁいいや、別にバレても良かったし。
あー…でもこんな早くバレちゃうとは…しくった…。」
イチは、かくん。と頭を下げ、下を向いたまま動かなくなった。
…
……
「…イチ?」
そんな暫く下を向いたままのイチ。
声をかけて、その肩に手を置く…
イチ「ねぇ…おーちゃん。」
前に、頭を少しだけ起こして、イチが切り出す。
「え?あ、なに?」
イチ「お願いがあるんだけど。」
「…なに?」
イチ「兄貴とさ、別れてくんない?」
ゆっくりと顔を上げて俺を見たイチは、そんな事を言った。
は?
「やだよ。」
イチ「っぶはっ!!即答!!」
そして1人で吹き出した。
…
……
イチ「あははは!…くふふっ…んふっふふふ…」
ずっと笑ってるイチ。
…
……
さすがに…ちょっとムカつくぞ。
「おい。ふざけてんの…」
イチ「ごめんなさい。」
「え?」
被せるように、急に真面目な顔をして深々と頭を下げて謝りの言葉。
「…へ、あ、え?え?」
イチ「知らないふりしてて、ごめんなさい。…ふざけてこんなことした訳じゃないんだ…その…これには理由があって…」
…あぁ
「お兄さんの為。でしょ?」
イチ「え?!」
もう辛い思いさせたくない。
「違う?」
違くないでしょ?
イチ「………」
「さっきのさ、別れてって言ったのが、イチの出したお兄さんの為への判断だったとしても、俺は絶対に相葉ちゃんとは別れない。」
イチ「…おーちゃん…」
だってもう
「俺にとって、誰よりも何よりも大切な人だから。」
イチ「…」
「だから、俺から手を離すことは絶対にしないし、離せって言われても離してやんない。」
イチ「……」
そう言い切った俺を、イチはま黙ってまじまじと見つめる。
そして
イチ「やっぱり、おにーさんは怖いや。」
そう言って、あははと相葉ちゃんと同じ笑顔をして笑った。