きみがすき
第31章 *はち*
チリン。
白い木製のドアを開ければ鈴が鳴る。
相「美味しかったねー。」
「うん。デザートも美味しかった。」
ご馳走さまでした。美味しかったです。と、声をかけてお店を出た俺達。
このお店は、ご夫婦2人で経営してるんだって。
メイン料理の後、しっかりデザートと食後のコーヒーまで頂いて。
デザートは季節の果物。じゃなくて季節の野菜を使ったケーキやムースがプレートに可愛く乗ってて、どれも、え?!野菜なの??ってくらい美味しかった。
相「っん~あ~~…お腹いっぱい。」
少しだけ前を歩く相葉ちゃんは、両手を目一杯のばして伸びをする。
「ね。しっかり量もあったね。」
男の人でも満足な量だ。
なんて返事をしながらも、俺の視線は相葉ちゃんの…手。
相「……あ!大ちゃん。」
くるり。と振り向いた相葉ちゃんに、少しドキリ。としつつ
「…なに?」
相「ここね。この先に湖があるんだって。結構広いみたいでさ、せっかくだから行ってみない?」
へぇ…だからこんなに涼しい風がくるのかな。
「いいね。行こっか。」
相「やった!よし 決まり!じゃぁ張り切って行こう!」
そう言って、力瘤ポーズの相葉ちゃん。
…
え?結構遠いの?(笑)
なーんて思ってる俺に気づいているのかいないのか。ニカっ。と笑って相葉ちゃんは歩き出す。
…ぁ
……うん。
よし!
俺は、歩き出した相葉ちゃんに追い付くように歩調を早め
追い付いたと同時に
さっきまで拳を作っていた右手目掛けて手を伸ばした。
相「っ…え…?!」
振り返って驚いた声を出したのは相葉ちゃん。
…だよね。
平日と言えど散歩やジョギングを楽しんでいる人達は結構いる。
相葉ちゃんが、その時どんな顔して俺を見たかは知らない。
だって…やっぱり恥ずかしくて、俺は手を握ったと同時に、ふい。とそっぽを向いちゃったから…。
相「…大ちゃん?」
…
……いいでしょ?ここまで頑張ったんだから、もう前向いて歩いてってよ。
そんでもって、早く俺の手。
握り返してきてよ。
なんて…自分勝手な事を考えてみたり
相「……くふ。
行こっか。」
そんな言葉と共に、
意識的に少しだけ離れた相葉ちゃんの手は、直ぐに俺の指を絡め取り…ぎゅっ。と強く、そして優しく…握ってくれた。