きみがすき
第32章 *きゅう*
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「さーとーしさん♪」
休憩時間
俺の呼び掛けに、げっ。と顔をした智さん
「あーなにその顔ー。」
大「取り調べのニノさん…」
「ん?なに?」
大「…イエナニモ…」
「昨日はどこ行ってきたの?」
大「……相葉ちゃんの行きたかったっていうカフェと、その近くをブラブラ。」
「楽しかった?」
大「うん。楽しかったよ。すごく。」
「そっか良かったね。で?」
大「で?」
「えっち。シたの?できた?大丈夫だった?」
大「っはぁ?!バカ!またこんなところで…!」
「感想は?」
大「っだぁぁ!もぉ!シてない!駅で別れて帰った!帰り遅くなっちゃったから!」
「え!えー?!そうなの?!なぁ~んだぁ…」
大「…………なんでニノが がっかりしてんだよ。」
「だって、他人事ほど面白い話はないでしょ?」
大「…ニノ、本音がだだ漏れだよ。」
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そんな会話をしたのは、もう2週間ほど前だ。
智さんは笑ってた。
でも…
松「それで?何が変なの?」
「約束。」
松「約束?」
そう。その日から、俺が誘っても「約束があって…」と断られる。そしてそんな日はいつもより早目に退社していく。
そりゃね。友達と会ったりすることもあるだろうけどさ。でも…4年近く智さん見てきてるけど、こんな頻繁なこと今まで無かった。
俺は潤くんにそう話した。
松「ふぅん。」
「それになんか嫌な予感がしてさ…」
松「それで"これ"?」
「うん…。」
松「……」
無言になってしまった潤くん。
気になって振り返れば…やっぱり不機嫌顔。
「…ごめん…やっぱり嫌だよね…」
松「気乗りはしないよね。"尾行"なんて。」
「…」
そう。俺は今は、駅前の柱の前に立っている智さんが、どんな人と待ち合わせをしているのか突き止めようとしている。
そりゃ…デートそっちのけでこんな、人のプライベート覗くような物騒なことしようとしてるなんて…潤くんは嫌に決まってる。
松「ま、でもわからなくはないよ。かずの気持ちは。」
「え?」
松「雅紀。あいつ最近変だから。」
相葉さん…も?
「どんな風に?」
松「あいつは…あ、来た。」
潤くんは、そう声を出した。
俺は急いで視線を智さんに戻す。
会社近くの駅前は、まだ人が多い時間
そこにいる智さんに近づく人。
それは…