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きみがすき

第32章 *きゅう*



控え目に「ここだよ」と示すように手をあげる智さん。

そこへ、足早に近づいてきたのは


スーツ姿の…

「…男。だ。」

どこかで智さんの約束の相手は、女なんじゃないかなって思っていた俺は、現れた相手を見て、ほっとしてしまった。

…でも

となると、誰?
頭に浮かんだのは翔さんだけど、翔さんよりも線の細い体に…翔さんよりも背は高そうな風貌に、直ぐに違うと判断する。


2人は、何かを話しているみたいだけど遠くて会話も表情も汲み取れない。

松「友達?」


「うん…俺は知らない人だけど、たぶん。

…ごめんね。俺の心配し過ぎだったみたい。
もう行こっか潤くん。」

これ以上、覗き見をしていたら本当に智さんに失礼だ。
たまたま約束が重なっただけだったんだ。

そう自分に言い聞かせて、立ち去ろうとした俺に…


松「あの2人、追いかけよう。」


「……えっ?」
と口にしたときには、俺は腕を引かれ、
潤くんが歩き出した方を見れば、智さんと、その男も既に何処かへ向かうのか歩き出していた。


「じゅ、潤くん?!どうしたの?なんで??」


松「…前にさ…少し前にもさ。俺、雅紀の様子がおかしいって言ったよね。」


「え?…あーうん。それ聞いて俺も心配してたけど…それが?」


松「雅紀、男同士でできるって知らなかったんだよ。」

できる?

「…ぁ……それって…えっちをってこと?」


松「うん。俺、雅紀んちに大野さんが泊まったっつーから、てっきりヤったのかなって思って聞いたら、あいつ『男同士ってできるの?』って。」

…マジで?

松「だから俺、できるよ。って教えたんだけどさ。そん時なんだよ。雅紀、なんか苦しそうな顔してさ…」


「うん…。」


潤くんの話す内容が、前にいる あの2人となんの関係があるのか。
けど、潤くんは2人から一定の距離を取りながら、話を続けていく。

松「もし…大野さんは、雅紀と体の関係を望んでて。でも雅紀は…それを望んでなくて…」



松「もし、この間会った時に、大野さんがその気持ちを伝えるか何かして、でも…雅紀はそれを拒んだら…」

……あ…

それって…すごく…


松「大野さん。


傷 付いたんじゃないかな。」

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