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きみがすき

第33章 *じゅう*



横を向けば、かずと合う視線。
複雑そうに笑った顔で、俺とかずは同じことを考えたんだとわかる。


あのイチトの感情は

自分に対しての嫌悪。
そして負い目。

心配がうえの、イチトの行動。
なのに…何もできなかった自分への悔しさ。

更には大野さんへも。

…それくらい、雅紀のことが心配で、何か出来ることがないかって思い続けてた。んだろうな。


でもさ、もう良いんじゃない?
大野さん、ちょっと変な人だけど、お前もそれに救われたんじゃない?



うん。と頷いたかず。

そうだね。
俺達、雅紀とちゃんと話をしなきゃな。





イチトは下を向いたままだったけど、大野さんは話を始めた。


大「相葉ちゃんね。会いに行くんだ。」

少しだけ眉毛の下がった顔はイチトへと向けられたまま。そして、ゆっくりとその視線は俺達へも向けられた。


誰に?

なんて聞かなくてもわかる。


ニ「どうして?」
もう、さっきまでのピリピリしていたかずはいない。いつも通り、大野さんへ話しかけるように問いかける。


大「相葉ちゃん。何も言えずに何も聞けずに、その子がいなくなっちゃったから、ちゃんと話をしたいって。」


「…どこにいるか知ってたのか?」


大「ううん。
俺と付き合ってから結構直ぐみたい。
その子から手紙が届いたのは。前のアパートにだけど。
大屋さんが教えてくれたって。」


ニ「…じゃぁ相手も、相葉さんに会いたがってるってこと?」


少しだけ間をあけて大野さんは こくん。と頷き
「謝りたい。って。
別れた後直ぐ自首して、今は刑期も明けたみたい。」
と、少しだけ笑った。




そうだ。
相手がやったことは立派な犯罪だ。

そうか…そりゃ、法に裁かれて罪を償っていない奴が、のこのこ会いたいなんて言えるわけがない。


でも、まてよ。それにしたってなんで雅紀?
今まで騙してきた人達もいるはず…その全てに謝るつもりか…?

大「その子、相葉ちゃんの初恋の人。なんだってね。」

…もしさ…もしもだよ?

相手が、その子が、本当に本当は悪い奴じゃなくて、何かどうしようもない事情で…人を騙さなくちゃ生きていけない様な環境で…とか

いや…すげー悪党だとしても


雅紀と出会って、一緒にいるうちにその子が変わろうと思ったのならば…



雅紀は…どうするのかな……

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