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きみがすき

第33章 *じゅう*

*松本*




今は、帰り道。
隣を歩くのは、あれから元気のないイチト。

少し後ろを振り向けば、なんだかワイワイと騒いでいる かずと大野さんが見えた。


大野さん。
口にすることで、少し…楽になったのかな。

大野さんは、
雅紀が、あの女(ひと)と会うことは、雅紀にとって必要なことなんだ。と言うけれど。
…そりゃ何となく、話も出来ずに別れたのなら、雅紀の話をしたいっていう気持ちは…わからなくもない。
けど…理解はできても、納得はいかなくて…

だって、それじゃ余りにも大野さんが辛いじゃんか。なんで今更…
大野さんも大野さんで、それを了承してさ…



…それかまだ、俺達が知らない理由がある…?



イチ「おーちゃん…大丈夫っスかね。」

ぽつん。と隣から聞こえてきた声。

「ん?…大丈夫っていうのは?」


イチ「うん……おーちゃんが、兄貴をすきでいてくれるのは、すげー伝わってくるし。それに兄貴には、おーちゃんしかいない。って思うし…思いたい。」


「うん。」


イチ「けど、今のおーちゃん危なっかしくて…本人はきっと自覚無いと思うんスけど、助けてあげたくなるような雰囲気 バンバン出してさぁ。」

…あぁ…

言われてみれば確かにな
さっきの俺は、それを感じとって追いかけちゃったのかもな。

イチ「だから 例えおーちゃんにその気がなくても、なんつーかどっかの変な奴に、サラッと持ってかれちゃいそうで。俺、心配なんスよね。」

…あ…え?

「もしかして、それで良く大野さんと会ってたのか?」

イチトは、その問いに俺の顔を一目してから頷いて「あ、就活は本当っスよ。」と、慌てて言った。



……

「本当か?」


イチ「…」


「本当に、ちゃんと就活してんのか?」


イチ「………エヘ♪」
その顔は、昔のまんまのあどけない顔で…

…つか
エヘ♪じゃねーよ。
金 稼ぐことなめんなよ。



……まぁ今はいいや。

「ったく。…元気そうでよかったよ。」

安心した。
まぁ後で改めて説教だけどな。

イチ「ボク。メンタル強目なんス。」


「…だろうな。
ま、大野さんは、かずが良く見てっから大丈夫だと思うよ。」

俺の気持ちは複雑だけど…

イチ「へぇ…あ、和也さんて、おーちゃんのことす…」
「うるさいよ!」


イチ「え?」


そんな煩い夏の夜

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