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きみがすき

第34章 *じゅういち*



大「っと…これ。」
智さんは、財布から諭吉を取り出し俺から近いテーブルの上に置いた。

小「え?いらないですよ智さん。全然飲んでないし、食ってないじゃないですか。」


大「ううん。元々奢る予定だったし。足りなかったら後で請求して。
戻ってくるつもりだけど、遅くなっちゃったら会計お願いね。ニノ。」


「はーい。」
俺は素直に甘えるけどね。

大「あと…」


「?」
俺の方を見たまま言葉を止めた智さん。

大「……」

その目は、なんだか心配そう?



……

あーなるほどね。
あの『大丈夫かな…』はこれね。
俺と小林が2人になるのが心配なのね。

大丈夫だよ。俺だっていい大人だし。
例え 心底関わりたくないと思ってる人間と2人キリになったとしても、本人目の前にしてあからさまに態度には出さないよ。


「管理の人困ってんでしょ?早く行きなよ。」

平気平気。上手くやって早々に切り上げますよ。
と視線を送れば
ま、伝わったか伝わらなかったかわからないけど

大「じゃぁ…行くね。」
と、後ろ髪でも引かれてるんじゃない?ってくらいの後ろめたさで、個室を後にした。




んで

「ゴクゴク」
ビールを飲む俺。

小「……」


「モグモク」
つまみを食う俺(←話しかける気はない)

小「あの…二宮さん。」


「なに?」
無視はしないよ。いい大人だから。

小「鍵の返し忘れって、始末書ですか?」


「あー…鍵にもよるかな。金庫とか重要書類の鍵だと、きっと1発で始末書だけど。パソコンなら注意で済むと思うよ。
だから早ければ1時間位で戻ってくるんじゃない?智さん。」


小「そうなんですか…」


「ゴクゴク」
そしてビールを飲む俺。

小「……」


「……」
携帯を弄る俺。

小「二宮さん…」


「んー?」


小「あの…二宮さんて、俺のこと きらいですか?」
それはとてもはっきりした、けど小さな声だった。

「え?そんなことないよ。」
俺は、ふふ。と笑って見せる。


これは本当よ?
だって、すき きらい以前の問題だもん。
つまり俺は小林に興味がない。他と一緒でただのイチ同僚。
あ、智さんは勿論別だよ。


小「え……ぁーなんだぁ…良かったぁ…」



…ぇ?
そんな言葉に顔を上げてみれば…
小林は安心したっつーよりは、とても嬉しそうに笑っていた。

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