きみがすき
第34章 *じゅういち*
聴こえてきたのは
『二宮って男がすきなんだって!
きっもちわるー!』
『げー!ホモだホモ!こっちくんなよ!』
初めて人をすきになった俺に、降り注いできたのは、尖った針のような言葉。
そして、鉛のように重い…痛み。
助けて。と手を伸ばした先からは…
『何言ってんだ!男がすきなんて、恥かしい!』
『和也は病気なのよ。病院行こう。ね?』
返ってきたのは、そんな言葉だ。
.
小「二宮さん。」
はは…病気って酷っ
あー…笑える。
小「二宮さん?」
「…え?」
いつの間にか、自分の世界に入っていた俺は、小林の声に はっ。と視線を上げた。
小「大丈夫ですか?…顔色、悪いですよ?」
「…あぁ…へーきへーき。」
つーか、お前が変なこと言い出すからだろ。
なんだよ、あっちとか そっちとか こっちとか。
小「さっきの…違っていたならすいません。」
…
小林が言う『こっち』って言うのは
同性愛者。それも根っからの。生まれつきのね。
「…違くない。」
当事者同士だからなのかなんなのか、全部が全部ではないけど、なんとなく『この人そうだな。』ってわかる事がある。
小林が俺の事をそう思ったように、俺も小林を、ぽいな。って。だから智さんをしつこく誘うこいつが危ないって思ったんだよ。
…とんだ勘違いだったけど。
その答えに、小林はほっ。とした顔をした。
なんだそりゃ…
自信満々な言い方してきたくせに
そして
小「お相手、どんな人なんですか?」
と、訊いてきた。
「…優しいよ……大切にしてくれる。」
自信をもって言うべきなのに…ぎゅっ。と膝上で拳になってしまった手の力を上手く抜くことができない。
小「…そ うですか。」
なんか…苦しいな
小「あの…二宮さん?」
なんだよ。まだなんかあんのかよ
つーか…頭痛い…
小「…なんで…泣きそう?なんですか?」
…ちょっと黙れ
お前のせいで思い出したくないことも
嫌いな部分も…出てきちゃったじゃねーか
小「……もしかして…」
やめろ
触れないで…
小「言ってないんですか…?」
…
……
あぁ…
小「っ…二宮さん…!」
焦った声
その声と、どっちが早かったのか
俺の目から何かが落ちて
一瞬だけクリアになった視界の先に
潤くんとは違う手が 近づいてくるのが見えた。