きみがすき
第34章 *じゅういち*
あの時、その影がなんでニノだと思ったのか
.
花壇の所々に設置されたライトアップ用の街灯。
でも雨の影響でか、その灯りは薄暗く頼りない。
俺の直ぐ側にあったその影は、膝を抱え丸まっていて…その顔は膝にしっかりとくっついていてわからない。
でも
「ニノ…」
ニノに間違いないと何故だか思った。
ピク。と少しだけ動いた肩。
俺の声は聞こえてたのかな。
「…なに…してるの?」
ニ「…」
次の言葉には反応は無い。
良く見れば
もう、水分を吸い込む余裕を無くしたYシャツやズボンからは…空から落ちてくる雫と同じ量がポタポタと地面へ垂れていく。
…ねぇいつから いたの…?
ビショビショの髪の毛
…なにが あった……?
ザワザワ。と騒ぎ出してしまった胸。
ここに…小林くんは居ない。
遅くなったと言っても、解散するには早い時間。
2人の間で何かあったの?
ザァ…!
一瞬 強くなった雨
それに俺は はっ。として
これ以上 ニノが雨で濡れないようにと慌てて近くにしゃがみ傘をさした。
ニ「……」
黙ったままのニノ。
でも、その手が ぎゅう。と膝を更に抱え込む。
それはまるで…
殻に籠るように、その薄い殻にヒビが入らないように…何かから守るようで
肩に手を掛けるのさえ躊躇する
…どうしよう…
どうしたら…
突然のこの状況が、ニノの状態がわからない俺の頭の中はパニックで
「ニノ…」
とにかくまた呼んでみるしかできなくて……
ニ「………やめ…て…」
「……え?」
ぽつん。と雨音の中に微かに聞こえてきた声。
ニ「………っ…」
「……」
ニ「…も……やだ……」
それは…雨音にかき消されてしまう程の声。
「なに が……?」
と、少しだけあげられた顔。
でも、その瞳は俺を見るためでもなく…何かを見るためでもなく
ただ、少し前の地面に向けられているだけで
青白い、ニノの肌。
そのおでこに、ぺたり。と張り付いた黒い前髪。
…それがとてもアンバランスに見えて
無意識に、何も考えずに…
俺は、おでこに手を伸ばしてしまった。
そして、触れた…
ニ「…っ!触んなっっ!!!」
ッパァァッン…!!
俺の手は 雨水と一緒に空中へ弾け跳んだ…