きみがすき
第36章 *じゅうさん*
…
……
………え?
『恋人いるから』…?
思わず止まる足。
「えー?なんだぁ…」
「そりゃあんだけ格好良かったら、彼女いるよねー。」
「もー!何処かにイケメンは落ちてないのかなぁ。」
相「ふふ。
ラストオーダーの時間になるけど、ご注文ありますか?」
「え!もうそんな時間?!」
「えー…あーじゃぁ〜……」
…
え?え?え?
何?さっきの…
なんで……?
聞き間違いだったかな?とか、もはや空耳かな?なんて考えて、そのままその場に突っ立っていた俺。
その俺を…相葉ちゃんの瞳が一瞬だけ見た。
「っ…」
…何…その目…
なんでそんな目で見るの?
カチャ…。
と手元から聞こえた音。
……あ、食器…
食器持ってって…そしたら洗って…
俺は、なんだかドギマギしちゃって
さっき片付けをしていた席の食器が乗ったトレイ。それを落としそうになりながらも、なんとか運んだ。
……
あ…れ?
食器溜まってるよ。なんて相葉ちゃんは言ったけど
シンクに置いてあるのは、どう見てもまだ 溜まったとは言えない位の食器の量で…
…
……
俺が…お客さんの対応に困ってるように見えたのかな。
だから、来てくれて助け船を出してくれた…?
……松潤の様になんて烏滸がましいことは1ミリも思ってない。けれど…俺が居ることで、力になるどころか余計に大変にさせてるのかもしれない…
シュン。として相葉ちゃんを見れば
今はもうさっきのテーブルから離れて、違う席に声を掛けている。
…
…あ
でも、恋人がいるって言ったのって、相葉ちゃんも良くお客さんに聞かれたりするんじゃないかな?
だから、いるって言った方が、その…何て言うか、角が立たない?……後腐れない??会話の仕方だったとか?
…
うん。きっとそうだそうだ。
なんて、無理に前向きに考えてみた。
…だから、
こんなドキドキする必要ない。
必要はない。んだよ。
けど…
俺の心臓は
ドキドキ。
ドキドキ。
といつまで経っても落ち着かない。
ラストオーダー…
壁に掛かった このお店にしてはレトロで、でもやっぱりお洒落な時計。
それを見上げる。
…
もう少し…
あと少しで
閉店する時間になってしまう…