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きみがすき

第36章 *じゅうさん*



まぁ…
当たり前だけど、俺がどんな気持ちだろうと時間は過ぎていくもんで




相「ありがとうございましたー。」

「ありがとうございました。」


そう挨拶したのは、最後のお客さん。

カラン。
と鳴った音を最後に、ついさっきまでザワザワしていた店内は、あっという間に静かになった。


聴こえるのは、店内に流れるBGM。
そして…隣には相葉ちゃん。


相「…、」

「あ のさ…」


相「…ん?」

相葉ちゃんが何かを言おうと空気を吸った様な気がして、それを遮るように声が出た。

「あ…えと……なんだっけ……あ、そうだ…、他に何か手伝えることあるかな?」


相「え?お皿洗ってくれただけで十分だよ。ありがとう。
後はもう1人でできるから、大ちゃんは休んでて?」



それって
俺がいると迷惑ってこと…?

…帰れってこと……?


でも
「あ、掃除は?それに何か足りない物とかあったら買ってくるよ?だから何でも言って?」


…なんで
こんなにも必死なのか

きっと…
何かをしていないと、ここに居ちゃいけないんじゃないかって…相葉ちゃんの側にいれなくなっちゃうんじゃないかって…思ったんだ。


相「でも…」
「それにほら!
2人でやれば早く帰れると思うし。ね?」

名案でしょ?とばかりに笑って見せた。
けど…

相「……」

見上げた相葉ちゃんの顔。
少しだけ色素の薄い俺のすきな瞳。

…その間にある眉間には皺が寄っていく


…ぁ
「俺とじゃ余計に時間かかっちゃうか。あはは。」

本当は…こんなことが言いたいんじゃない
聞きたいことだってあるのに…


相「…大ちゃんさ…」

「じゃぁせめて休憩室だけでも掃除させて?
俺、使わせて貰っちゃったし。」

そう伝えた俺は、相葉ちゃんの返事なんて聞かずに逃げるように背を向ける。


カラカラ

カラカラ

頭の中で空回りの音がする。


もう…駄目なのかな…




相「っ待ってよ!!」

!!

ぐんっ!と後ろから捕まれた腕。
俺は、その勢いであっという間に相葉ちゃんの方へ引かれた。



「っ!」


すぐ、目の前には相葉ちゃんの顔。

予想もしない近さに驚いた。

でも…それよりも


相葉ちゃんの瞳。


その瞳は…すごく怒っている様に俺には見えて


思わず、パッと下を向いてしまった。

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