きみがすき
第37章 *きみが・・*
カタっ…
できるだけ雑にならない様、抑えて立ち上がったのは、相葉ちゃんの大切なお店だから
とかではない。
ただ、冷静でいようと まだ頭の片隅に残っていた理性が働いたから。
目の前の椅子に座る相葉ちゃんまでは、ほんの1歩。
俺は、右腕を掴んでその体を引っ張った。
相葉ちゃんは、そうされることが知っていたかの様に
すんなりと立ち上がる。
わかってはいたけど、俺より高い背丈。
今は、それすらもムカついた。
相「なに?なんか俺、間違ってる事ある?」
酷いよ。とか
「大有りだよ。」
悲しい。とか
相「…ふっ。そう。
じゃぁ教えてよ。」
そんな事よりも、ただ…腹が立った。
相「何が間違ってんのか。大ちゃんは。何を考えてたか言ってみてよ。」
まるで「どうせ当たってんでしょ。ふふん。」とでも聞こえてきそうな笑い。
…その顔
嫌いだ。
そう思った途端。
頭の中で、カチン。と何かが鳴った。
ぐぐっ。と腕を掴む手に力が入る。
「っ…馬鹿にしてんのはどっちだ…」
相「別に馬鹿になんてしてないよ。俺は本当のこと…」
「ふざけてんのはどっちだっっ!!!」
相「っ…!」
「さっきっから聞いてれば、好き勝手なこと言いやがって!何が女がいいだ!新しい人がいるだ!!
いつ!誰がそんな事言ったんだよ!
……俺がいつ…!相葉ちゃんのこと、その程度な人だなんて言ったんだよ!!」
相「……」
「……俺は…俺が!どんな気持ちで…!別れたと思って……待たないって言ったか知りもしないで!」
ギリギリ。ギリギリ。と強くなる腕を掴む手が止められない。
「嫌だったよ!元カノの所なんか行って欲しくなんかない!
いつまでも引きずって、そっちこそ俺に失礼じゃねーのかよ!!」
はぁ…はぁ…と上がった息と、霞んでいく視界。
「この数週間、不安で…怖くて…
本当に終わっちゃうかもしれない 相葉ちゃんからの電話なんて出れるわけないだろ!」
きっと言ってる事はぐちゃぐちゃで
「また!…っ…また…俺の気持ち否定すんのかよ…!
俺が…どんな気持ちで相葉ちゃんしたいって言ったか…!……できない。って言われて…そん時の俺の気持ちわかんのかよ……!」
泣かない。泣きたくない。
けど…
最後の方は、声も、手も…震えていたと思う。