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きみがすき

第37章 *きみが・・*



ポコポコ

相「…」
「……」

店内に聞こえるのは、水槽の音。
けど、その音は俺の耳には届いてなくて

ただ…爆発してしまった感情に
自分自身が戸惑い
ただ、涙を堪えるのに必死だった

.

どれくらい たったのか…


くっ。と動いた、相葉ちゃんの腕。

あ、離れてく…と思った時には
腕は手の形に沿って肌色の皮膚は白く、血の気がなくなっていた。


「ごめ…!」
俺…なんてことを……
俺の力とはいえ、締め付けた力が強かった事に今更気が付いて

サァ…。と何かが冷えてった。



…ぇ?

驚いたのは
その腕で、手で、俺の腕に触れたから


見上げれば…そこに真っ直ぐな瞳



……

何か…言われたわけでもない。
けど、何故だかその目は、次の言葉を待ってくれている様で…




ゆっくり

空気を吸った

「……傷付いた。ショックだった。すきな人に受け入れて貰えないのは、辛かった…。」


相「……」


「でも…
理由 わかったから…彼女に会わなきゃならないことも…相葉ちゃんにとってそれは必要な事なんだって…ちゃんと俺に話してくれたから…
だから会って、話をして欲しいって。」


相「…うん」


「俺が…2人の邪魔になっちゃうかもしれない。そう とも思った。」


相「…」


「けど、それよりも怖かった…
相葉ちゃんが彼女のところに行っちゃって…俺から離れて行っちゃうのが怖かった…
ならいっそのこと…俺からって……」


だから
俺は、ここで泣いちゃ駄目なんだ。
泣く資格ないんだよ


「…っ……、」


泣かない……




相「…ねぇ…」

目の前なのに
もう…目には膜が張ってて、相葉ちゃんがどんな顔をしているのかわからない。


相「さっき俺のこと すきって言ったのは本心?」

そんな数分前とは全然違う声色


俺は…かろうじて、まだ瞳の中の涙が溢れないように堪えつつ

うん。と強く、頷いた。




相「………はは…」



溜め息混じりの笑い声

……

やっぱ…呆れるよね
とんだ狡い奴だって…



相「馬っ鹿だなぁ。大ちゃんは。」



……

「…へ?」

その言葉に思わず変な声が出て
ポロっ。と涙が落ちてった。


相「でも、俺はもっと馬鹿だ。」


開けた視界にあったのは
今にも泣きそうな…でも俺のすきな顔だった。

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