きみがすき
第4章 *サン*
やばいやばいやばい。
さして強くない力で、俺を抱き締める大野さん。
引き離そうと思えば、簡単に離すことができそう。
でも、それをさせないのは、さっきの笑顔と、
この"におい"。
以前、仕事中に大野さんとぶつかったことがあった。
ふわっと香るにおいに、香水ですか?と聞いたけど、香水はつけない派、なんだって。
洗剤とも違う、きっとこれが大野さんの、"におい "なんだろう。
におい?フェロモン?つーの?って耳の裏とか、首から出るんだっけ?
今は抱き付かれてるからダイレクトに、俺の鼻をくすぐる。
ドキドキしていた心臓が、今はゆっくりと動いてリラックスしている自分がいる。不思議なにおい。
人も居ないし、櫻井さんが来るまで、このままでいいか。なんて思ってしまう。
ね、ニノ。
と、急に耳元で名前を呼ばれて、収まっていた心臓がドクンと跳ねた。
「あ、はい。」と咄嗟に返事をする。
気が付いた時には、俺の肩にあった大野さんの顔は俺の目の前。
ホントに綺麗な顔。
大「ね、しよっか。」と首を傾げた。
何を?と考える暇もなく、大野さんの顔がゆっくりと近づいてきて、キスのことだとわかった。