きみがすき
第5章 *ヨン*
そんな声でお願いされたら、ヤダなんて言えないじゃん。
ズルいよ。
櫻「じゃ、俺たちは行くね。二宮くん、今日はありがと。智くんにはあとで良く言っておくから。
松本くんもありがとう。また来るね。」
と、よいしょっと大野さんを荷物のように抱えて大通りの方へ消えていった。
「…」
松「…。」
…無言。なんの時間よ。
「…店。」
松「え?」
「店は大丈夫なのかって。」
松「あー、中は雅紀が来てくれてるから、大丈夫。」
「相葉さん?来てたの?」
松「お陰様で、今日は思いのほか忙しくてさ、ピンチヒッターでお願いした。」
なんだ、いたなら声ぐらい掛けてくれたらいいのに。
ま、忙しそうだったからね。今日。
ふと、
「…なんで、潤くん、外に来たの?」
と疑問が浮かんだ。
松「んー?…や、なんかさ、かずの声が…聞こえたような気がしたんだよね。せっぱ詰まったようなさ。
なんかあったのかって心配になってさ、雅紀に中任せて出てきちゃった。」
なにそれ、俺の心の声、聞こえたの?
大野さんに抱き締められて、テンパってたから、別に潤くんに言った訳じゃないけどさ。
「そ、で、話、俺的には終わってるけど、なに?」
なんだか恥ずかしくて、自分でも刺があると思う言い方になってしまった。
松「…俺、邪魔したかなって。」
じゃま?なんの話?と首を傾げる。
松「あの大野って人と、の、キス邪魔したかなって思って。
かずは、さ、大野さんが…好き…なの?」
と下を向き、最後の方はやっと聞き取れる声だった。
…俺が?大野さんのことを好き?
そりゃキスされそうになって、ドキドキしたのはしたけど、キスできなくて残念とは思わない。むしろ潤くんが助けてくれてホッとした。