きみがすき
第5章 *ヨン*
ドクン ドクン
と心臓が痛いくらい、俺の胸を打つ。
『嘘だろ…』
この状況で、それ出しちゃう?!
智くんを、起こそうとした所で抱きつかれたから、智くんの体重を支えきれずに、
俺が、ベッドに押し倒してる風になってしまった。
…腕、限界なのに…。
プルプルする腕に鞭をして、智くんがつぶれないように、なんとか体を浮かす。
気持ちを落ち着かせようと、
すぅ。と深呼吸をした。
それが不味かった…。んだろうな。
部屋から、ベッドから、智くんから、
俺の、好きなにおい。
…抱き締めたい。
…キスしたい…。
全身から冷や汗がじわりと出てくる。
『ふざけんなよ。
俺が、どんな気持ちで!』
俺の中で何かが、プツンと切れた。
智くんがつぶれないように、
体の位置を変えて、
震える手で、俺を締め付ける
智くんの腕を掴んだ。
締め付ける力に反して、あっさりと離れた腕。
智くんの体が俺から離れ、ベッドに沈む。
カーテンの隙間から、月明かりが差し込み、
智くんの綺麗な顔が…浮かび上がる。
そして、智くんの綺麗な瞳と…
目が合った。