きみがすき
第5章 *ヨン*
ドンッと心臓が跳ねる。
「さ、智くん…?起きてるの?」
少し茶色の瞳の中に、
俺の困惑した顔が写る。
と、思ったら、その瞳が閉じられ
直ぐに、規則正しい寝息が聞こえた。
焦った…。
アルコールのせいか、智くんの体温は熱い。
いつも以上に潤んでいた瞳。
卑怯なのはわかってる。
でも、
ただ、目の前の人が欲しいと思った。
……最後だから…。
うっすらと開いている、少しかさついた唇。
智くんの頬に手を添え、
親指でその唇に触れる。
ゆっくり…ゆっくり…と
智くんの唇に、自分の唇を
重ねた。
初めて…俺からしたキス。
いつもはぶつけるようなキスしかされないから、
その柔らかさに、目眩がする。
名残惜しい気持ちを押さえて、
ゆっくりと唇を離した。
お互いの息がわかる距離、
智くんの顔を見つめて
声を絞り出す
「好き…。だよ。」
墓場まで持っていくつもりだった思いを
吐き出した。
ブゥゥゥ…ン!
外から、バイク音が聞こえ、
思わずビクッと体が震えた。
何やってんだ、俺。
酔っ払い襲うなんて。
我に返り、急に恥ずかしさと、
罪悪感が襲う。
『帰らなきゃ、ここにいたら暴走する。』
智くんから、体を離そうとした
その時だった…
大「翔くん。」
穏やかだけど、はっきりとした
智くんの声が聞こえた。