
きみがすき
第7章 *ロク*
もう少しで目的地。
少し遠くに見える店の窓には、小さな小さなクリスマスツリー。
『もうそんな時期か。』
それは、暖かそうなライトに照らされて、
なんだか懐かしいような、別世界のような
雰囲気だった。
少し前を歩いていたニノが振り返り
俺を見る。
ニ「お疲れ様でした。」
「うん。お疲れ。」
表情が硬いなぁ。
ここからはニノと松潤のこと。
俺に出来るのは、これくらい。
ニノの頬っぺたを、ぐいっと持ち上げた。
寒さか、緊張か、少し潤んだ目を大きくして
ニ「いひゃいです。」
と情けない声と、変な顔で文句を言うニノ。
「くっ」思った以上に変な顔に笑っちゃった。
俺が手を離すと
ニ「もー。なにすんですか。」
と頬っぺたを擦りながら、
口を尖らせる。
でも直ぐにニノのいつもの笑顔。
『大丈夫だよ。』
ニノの気持ち、伝わりますように。
と気持ちを込めて、笑顔を返した。
ニノは、こくんと頷き、
ニ「じゃ…行きますね。」
と、ニノが店に向かおうとした
「ありがとうございました。」
カラン…と落ち着いたドアの音と共に
2つの影。
松潤。と女の人。
ピタリと足を止めたニノ。
俺も何となく動きを止める。
少し遠くて、何を話しているのかわからない。
でも、時々聞こえる笑い声。
常連さんなのかな?
お店から漏れた明かり。
少し離れて、俺達は影になったところにいるから
気がついてなさそう。
覗き見してるみたいで、なんだか気まずい。
止まったままのニノが気になり、
近くに寄る。
ヒュッと
ニノの息を飲む音。
何?と視線の先を見る。
『あ…』
そこには暖かな明かりの下で、
キスする二人。
多分、一瞬のこと。
直ぐに、女の人が離れて、
俺達のところに向かってくる。
どうしよう。と考える暇もなく、
女の人は、ここに人が居たことを
やっぱり気がついてなかったのか
一瞬だけ驚いた顔をしたけど、
足早に俺達の横を通りすぎて行った。
