きみがすき
第9章 *ハチ*
「…」
大「…。」
「…話ってさ、
この間のことでしょ?」
智くんがマグカップを置いたところで
俺から切り出す。
ピクりと智くんの肩が揺れる。
焦れったいのは嫌い。
ねぇ智くん?
大「…翔くん…。」
少し潤んだ瞳に俺が映る。
ケジメ。
付けに来てくれたんでしょ?
智くんは、一度目を伏せ、大きく息を吸って、
俺と目を合わせた。
大「俺が潰れた日。」
静かな部屋に智くんの声が響く
「翔くんが家まで送ってくれた日さ。」
「うん。」
大「ずっとじゃ無いんだけど、
俺、覚えてる事があるの。」
「…うん。」
大「翔くん。
俺、翔くんが俺の事、
すきになってくれて
…すごく嬉しかった。」
「…。」
言葉に詰まる。
智くんから話があるって言われて
きっと、この話なんだろうなって。
あの日から、切り替た気持ち。
心の準備は出来ていたと思ってたけど、
改めてその話をされると、
あの時の、静けさだったり、
においだったり、寝息だったり、
智くんの唇の感触だったりが、
一気にフラッシュバックする。
じわりと手に汗がにじむ。