きみがすき
第9章 *ハチ*
『あ…ダメだ。』
そう思ったときには
もう俺の目から涙は溢れてて
『なんで泣いてんだよ…』
なんて思いながら
これ以上泣かないようにと
下唇を噛み締めた。
大「…ありがとうなんて言わないでよ。
俺、今まで
翔くんに無神経なこと沢山して
傷付けてたよね…。」
智くんの声が震えてる。
「さ、としくん…」
俺の声もぶれぶれ…
大「俺…、ずるい奴なんだよ。
翔くん、の気持ちに答えられないくせに、
翔くんと、これからも一緒に、いた…くて…
ほんとは…ほんとは、もっと早く
会いにこなきゃいけなかったのに…。」
そう言って智くんは
痛いって位に俺を抱き締めた。
智くんから伝わる熱いくらいの体温
それはきっと、身体からの熱だけじゃなくて
智くんの真っ直ぐな、気持ちも
あるのかもしれない。
「…。」
きっとさ…
普通だったらさ
ふった側が泣いちゃうとか
抱き締めちゃうとか
ずりーじゃん。
でもさ…
なんでだろ、
なんかうまく言えないけど
本人は、こうしたらずるいとか、
こうしたら喜ぶとか
そんなのこれっぽっちも考えてなくて
全てがストレートなんだよね。
あー…もう、ね。
ほんと敵わない。