きみがすき
第9章 *ハチ*
ぎゅうっと抱き締められたまま。
どれくらいたったかな。
智くんから聞こえてたグズグスも落ち着いて
この体勢キツくないのかな?
って考え始めた頃。
大「…翔くん。」
ポツリと智くんの声が聞こえて我に返る。
ゆっくりと俺から離れる体。
智くんのその瞳は赤いけど、もう涙はなくて。
でも瞳は絶えず揺れている。
大「…。」
俺の名前を呼んでから、何も話さない。
口を開きかけては、噛みしめ、
何かを言いたいのはわかるけど…
「…智く…」
大「翔くん!
今までありがとう!
俺、翔くんに出会えてほんとに良かった!」
『…うん?』
大「俺はずっと、ずっと!
翔くんの幸せを願ってるからね!」
そう早口に話した。
「…」
いやいや、本人はめっちゃ笑顔作ってるつもりかもしれないけど、今までに無いくらい、ぎこちない半笑い状態ですけどね
てか、
ふーん。へー。なるほどね。
要するに、頑張って智くんなりに考えた結果がこれね。
ふーん…ちょっとムカツクな。
だから
「そっか。
こっちこそ、今までありがとう。
俺、幸せになるよ。」
俺は満面の笑顔を返す。