きみがすき
第9章 *ハチ*
その綺麗な瞳が大きく揺れる。
開きかけた唇を噛み締め、
こくん、と頷いた。
「…。」
大「…。」
ほんの少しの沈黙の後、
口を開いたのは智くん。
大「…あ、じゃぁ…俺、そろそろ帰るね。
急に来てごめんね!」
そう言って、上着を雑に掴んで
急いで玄関の方に向かう貴方。
「…っ本当にこれでいいの?」
その背中に問いかける。
大「…。」
「智くんはこれでいいの?」
ピタリと止まった智くんへ
もう1度同じ質問を投げかける。
大「…俺が、翔くんに出来るのはこれくらいしかないから。」
「俺のためじゃなくてさ、
智くんの気持ちは?」
大「…。」
俺から見えるのは智くんの後ろ姿。
その背中が、いつも以上に丸まってて
智くんらしいけど、智くんらしくない。
「俺はさ、この選択肢は嫌なんだけど。」
智くんは違うの?
「俺、智くんの1番の親友だと思ってるんだけど、違った?」
大「…。」
「そのポジションは、今までも、これからも
誰にも譲る気無いんだけど。駄目だった?」
大「っ…。」
「俺は、これからも智くんと遊びいったり、バカやったりしたいと思ってるけど、そう思ってるのは俺だけかよ!」
大「しょ…く、ん」