
愛しの潤ちゃん!
第1章 1.誕生日
冷たい風が肌を撫でては過ぎ去っていく、秋。
わたし、小松ひなは16歳になりました。
「今日も潤くんとこに行くの?」
「もちろん! 潤ちゃん、先生より教えるの上手なんだよ」
買ってもらったばかりの秋物新作の靴を履いていると、お母さんが頬に手を当ててぼやいた。
「あんたも年頃なんだから、ちょっとは警戒しなさいよね…。まあ、潤くんなら大丈夫でしょうけど」
「何言ってるのお母さん…潤ちゃんだよ? 大丈夫に決まってるじゃんっ」
わたしは心の中で、潤ちゃんはね、と呟いた。
「あんまり遅くならないでよ、ケーキとか用意してるんだからね」
「やったー! わかった! いってきまーす!」
あくまで自然に、疑われないように、わたしは笑顔で家を出た。
風が私のワンピースの裾を揺らした。
