兄達に抱かれる夜
第10章 可愛がって貰えたみたいだね
頼れるのは、この人しかいないと、そう思えた。
康兄様の腕を引いて、部屋へと招き入れる。
いつもの癖で鍵を締めて、机の前に椅子を置いて、あたしの椅子と並べた。
「俺がお前のお願いを、聞かない訳がないだろう?」
あたしの顔をじっと見つめて、くすりと、甘く笑う、康兄様の瞳がやけに艶やかな色気を含んでて、ドキリとした。
あたしの隣の椅子を引いて、流れるような動作で、綺麗に座る、長い足を組んで、姿勢を正す。
机の上にある、行き詰まったまま、開いてあるテキスト、教科書にざっと目を通す流し目、長い睫毛。
男の人なのに、どうしてこうも色気を振り撒いて、綺麗な存在なのか、勝手にドキドキして、緊張してしまう。
どうしてだろう、以前は感じなかったのに、康兄様に男の人の色気を感じさせられて、ドキドキしてしまう。
ぎこちなく、隣の椅子に座る、軽く肩がぶつかり、意識してしまう。
平然とした様子でテキストに目を通している、康兄様。
「どこから分からない?」
「このあたりかもしれない」
数学が一番苦手なあたし、どんどん遡って分からない気がして、訳が分からなくなっていた。
「……なるほどね、取り敢えず、落ち着いて、この公式を完全に暗記してごらん?」
「……えっ?暗記してる筈だけど……?」
「いいから、落ち着いて、頭の中に叩き込むんだよ?」
言われた通りに頭の中に並べる、公式を何度も頭に詰め込む。
うん、何となく、落ち着いて来た。
昔から勉強を教えるのが、上手な康兄様。
和兄様は教えるのが下手で、何故だか、こうなったら、こうなる筈だよ?的な感覚でしか分からないみたいだし、教えるのが分からない様子。
翔太も教えてくれない、すぐに怒るし、自分で勉強すれば分かるだろうと、以外と冷たい。
兄弟でも、性格はまるきり違う、見た目は何となく似てるけど、綺麗な顔立ちの美形な兄様。
ふいに、康兄様の手が、あたしの手を握り締めた、手の平を合わせて、指を絡ませる。
「康兄様……?」
「ちゃんと、覚えられたかい?」
至近距離で見つめられて、睫毛が触れそうな距離に、ドキドキする。