兄達に抱かれる夜
第10章 可愛がって貰えたみたいだね
優しくて、艶やかな甘い瞳が輝いて、唇が軽く重なる。
「康兄様……っ」
抗議するように睨むけど、艶やかに笑い、軽く唇を舐めている姿にぞくりとさせられてしまう。
「ちゃんと勉強しないと、今夜は共に過ごせないからね、ちゃんと、覚えてもらわないと……」
「もう、覚えたから、っていうか、最初から覚えてたし……っ」
「じゃあ、もう1回、問題を解いてごらん?」
テキストをすいっと机の上で滑らせて、あたしの目の前で並ぶ、嫌いな数字の羅列。
しょうがなく、問題を解いて、あれっ?と、気付いてしまう。
あたしってば、頭がいっぱいいっぱいで、軽くパニックになってて、覚えた筈の公式を間違ってたのかな……?
馬鹿だ、あたし、昔から、ボケた事をしてしまう。
恥ずかしくて、シャーペンを走らせて、あっという間に、問題を解いてしまった。
「問題解決だね、他に分からない所は?」
康兄様が甘く笑いながら、また、ゆっくり顔が近付く。
だんだん縮まる距離に、焦って教科書のページを捲る。
「ちょっと、待って、康兄様……っ」
「……これ以上は待てない、やっと俺と過ごす日が来たんだから。
それまで、長かったよ、ずっと我慢してたんだから、恵麻にずっと触れたくて、堪らなかった」
至近距離で見つめられて、甘く囁かれて、また、唇が重なる。
「翔太は優しくしてくれたかい?
随分長く独占してたみたいだね、今度から一緒に過ごす時間も制限したいくらいだ、俺との時間を一番長くして欲しいな」
「そんなルールも何もないよ」
唇を離して、じっと見つめられた。
甘く瞬く瞳が、切なく揺れる。
「そうだな、決まっているのは、子孫を残す事だけ、ただそれだけなのに、欲しいのは、お前だけなんだけどな……」
ぎゅっと、抱きしめられた。
欲しいのは、お前だけ……。
その言葉が嬉しくて、胸が痛くなった。
康兄様は昔から優しくて、あたしが欲しい言葉をくれる。
ゆっくり体を離して、じっと見つめられて、優しく微笑む。
「さあ、この調子で勉強しようか?
午後からは、息抜きで、少し出掛けようか?」