兄達に抱かれる夜
第10章 可愛がって貰えたみたいだね
康side
「あなたのお嫁さんになる子よ?」
母さんから、ずっと教えられ続けていた。
有馬家の長男として、厳しく教育されて、爺さんにも剣道でしごかれて、辛い時もあった。
お嫁さんになる石田家の女の子。
その内、養子として、迎える。
俺達、兄弟の嫁になる。
長男である、俺と一緒になるのが、一番いいけど、最終的には本人の意思で選らんで貰う。
最初から、そう聞かされていた。
有馬家、土御門家、石田家の集まりが、幼い頃にあった。
初めて恵麻に会ったのはその時だ。
有馬家の庭園で、遊んでいた、一人の女の子。
母さんの言葉に、興味を惹かれ、俺はその子がいる場所に連れて行かれた。
「一緒に話してらっしゃい?」
軽く背中を押されて、庭の木の下にいる、女の子の傍に行く。
エスカレーター式に大学まで進める幼稚舎に通っている女の子、着物姿で七五三みたいに、可愛らしくて、木の下で無邪気に跳び跳ねている。
何をしているんだろう?
大人達は集まって難しい話をしている。
子供達は広い庭で遊んでいた。
恵麻は一人でいた。
大きな木の下で跳び跳ねている、無邪気な子供、今の学習院の初等部に通っていた、俺はどこか冷めていて、大人達からはしっかりしているとは言われていたけど、ただのガキじゃん、正直思った。
何で木の下で跳び跳ねてるんだ?
犬とか猫とかの同じ類い?
子供ってこんなモノか?
良く見たら、木の上に風船が引っ掛かっている。
何で風船が?
ここは自分の家の庭で、遊園地でも何もないのに。
跳び跳ねても届く訳がない高さにあるし、登れない高さではないけど、自分の家の庭だから、あの木に上った事もあるけど、正直面倒臭いな。
「こんにちは、どうしたの?」
一応優しく声をかける。
背の低い子供には、少し屈んで、同じ目線で声をかけると、怖がられない、知識だけはあった。
「お兄ちゃんっ、あれ、恵麻のなのっ、あれ取って〜?」
木の上で引っ掛かっている、赤い風船を指差している。
人懐こい笑顔、そう言えば、誰かが取ってくれると分かっている態度。