兄達に抱かれる夜
第7章 お前を連れ去りたい
自分の部屋に戻って、パンツだけはいて、浴衣姿のまま、ベッドに入った。
部屋の鍵はしっかり閉めて、ゆっくり目を閉じた。
これで、大丈夫。
夢を見た。
昔の夢。
あたしが有馬の家に行く前の、石田の家で、あたしの双子の兄、環(タマキ)と話をした。
『恵麻、どうして僕も一緒にいけないのかなぁ?離れたくなんかないのに、どうしてお母様は意地悪言うのかなあ?』
『お母様は意地悪なんかじゃないよ、環が男の子だから、一緒には行けないんだって、女の子だったら、ずっと一緒にいられたのにね』
双子の兄の環は、女の子みたいな外見で、いつもあたしと同じような髪型で長い髪をした、可愛い外見をしていた。
『女の子の振りをしてもダメだって言われたんだ。
だから、僕、もう少し大きくなったら、恵麻に会いに行くからね。
本当は会ったらいけないって言われたけど、大きくなったら、色々出来るようになるから、待っててね、恵麻』
『うん、待ってるよ』
『きっと、迎えに行くからね』
『うん、約束』
互いに指切りをして、子供らしい約束を交わした。
ああ、懐かしい。
あたしの双子の兄、あたしの片割れ、仲よしでいつも一緒に過ごしたのに。
もう、ずっと、会ってない。
元気でやっているだろうか、兄様は環をまた、苛めてはいないだろうか。
『……………恵麻』
何故だか、環の声が、聞こえたような気がした。
『やっと……………会えるね』
おかしな夢だ。
あたしの部屋の外にある木の上で、大人になった環が、女の子の制服を着て座っている。
少し大きめな濡れたような瞳は、あたしの部屋の窓をじっと見つめて、ベッドの上にいる、あたしの姿を映している。
環の瞳を通して、あたしの姿が映る、やっと会えると、何故だか、思った。
不思議な夢だった。