兄達に抱かれる夜
第8章 君は誰かな?
早く夜にならないかな。
買い物は昨日、康兄さんが一緒に連れて行って、可愛い服が家に何着か届いてたし、また、先を越されてしまったな。
俺はディナーでも連れて行くかな。
夜景の綺麗なホテル、ドレスアップして、海の上での、パーティーにでも参加しようか。
いや、二人きりになりたいしな。
あれやこれやと考えを巡らせて、庭園の木がガサリと音をたてた。
紅葉が美しくなる季節だ、今日は少し寒いけど、庭園の木が揺れた気がして、顔をあげた。
フワリと風に舞う、グレーのチェックのスカートが目に入った。
近くの公立高校の制服だと、すぐに気付く。
「誰かいるの?」
庭が広すぎて、セコムも警備もクソもない、ガレージは万全の警備だけどね。
見事な日本庭園だけど、石とか錦鯉とか、取られても困るモノじゃないからね。
スカートが風に舞いながら、綺麗な姿で、木から飛び降りる、女性、その外見、その姿は、
「………あれ、恵麻?」
俺達の大事な花嫁、恵麻そのもので。
だけど、変な違和感、制服が違う、雰囲気が、違う。
「…………君は誰かな?」
眉を潜めて、その綺麗な顔を食い入るように見つめる。
姿、形、背格好まで、そっくりだけど。
俺の、恵麻ではない。
「……なんだ、やっぱりバレちゃったか?あんたは和か、ただのバカじゃないんだね?」
にっこり花のように笑いながら、毒を吐く、声が低い、口が悪い、男かこいつは。
「お前は何なの、恵麻とはどういう……」
「やっぱり馬鹿だ、何も知らないんだね」
ジロリと鋭く見つめられて、ふんと笑っている。
いちいち恵麻と重なって、ぞくぞくしてしまう。
俺、Mっ気もあるのかな。
「……恵麻の双子の兄の環だよ、土御門 環(つちみかど たまき)よろしくね、お兄様」
優雅な仕草で制服のスカートを広げて、ちょこんとお辞儀をするけど、いちいち可愛いけどムカつくな、男だろ、こいつは。