兄達に抱かれる夜
第8章 君は誰かな?
今日は和兄様と過ごす夜。
…………そんな気分になれなくて
朝から冷たくしてしまった。
和兄様は何も悪くないのに………。
自己嫌悪で学校へと行き、上の空で授業を終えた。
そして。
校門の前で、見覚えのあるフェラーリを見て、咄嗟に隠れてしまっていた。
校門の前に並んでいる木の陰で、隠れてそっと様子を伺っていた。
友達のメグちゃんと、話をして、手を振って学校へと入って行く和兄様。
その姿が見えなくなって、みんなの所へ向かう。
「あっ、どうしたの恵麻〜、和兄様が探しに行ったよ〜?」
「そんな所で隠れて、ひょっとして、喧嘩でもしたの〜?」
カナちゃんがにやにや笑いながら、あたしの背中を軽く叩く。
「………うん、ちょっとね」
話を合わすように、頷いて、学校の校舎の方へ、気になって目を向ける。
それなのに、みんなと一緒に歩き出すあたしの様子を見て、メグちゃんがあたしの腕を組んだ。
「和兄様と一緒に帰りたくないのなら、メールでもしとけば?」
「久し振りに一緒に帰ろうか?だいたい喧嘩でもした時じゃないと、一緒に帰れないもんね〜?」
そうなんだ。
兄様は皆、車の免許を取って、それぞれの愛車に乗って、あたしを学校に迎えに来る時が、実はチャンスとばかりに、兄様を騙すような真似をして、友達と遊びに出掛けるのだ。
その中でも一番多いのが和兄様なんだけど。
朝食の席で和兄様との会話を思いだす。
『翔太の奴、また、いないな、最近あいつを見かけなくなったよね?
恵麻は昨日、翔太に会った?』
深い意味はなかったのかもしれない。
だけど、あたしは、ぐっと詰まって、何も言えなくなって、泣きそうになったんだ。
その後にドライブに誘われて、今日の夜は何をして過ごしたいかとか聞かれたのに。
『ごめんなさい、和兄様あたし……』
そんな気分じゃない。
出来る事なら、誰とも過ごしたくない。
康兄様はもう出掛けていた。
お父様とお母様もいない。
仕来たりを忘れている訳じゃない。
ただ、今は……。