兄達に抱かれる夜
第8章 君は誰かな?
折角だから、久し振りにカラオケボックスに行こうと言う事になって、5人でカラオケボックスに行く。
男の子二人はメグちゃんと、カナちゃんの彼氏で皆、クラスメイトだ。
良く行くカラオケボックスで、ジュースを頼んで、好きな曲を選んで歌って、久し振りに沢山笑って、色んな話をして、トイレに行きたくなって、席を立った。
トイレから出て、鼻唄を歌いながら、手を洗っていたら、誰かが入って来て、鏡の中に映る人影、あたしと同じ顔が鏡の中で並んで、びっくりして、振り返る。
「………………どうして?」
すぐに分かった。
公立高校の制服、長い黒髪の女の子の格好だけど、同じ顔、同じ姿。
忘れはしない、あたしの半身。
「……………環?」
振り返るあたしに近付いて、環が優しくフワリと微笑んだ。
「久し振り、恵麻、ずっと…………会いたかったよ?」
ぎゅっと、抱きしめられた。
「どうしてここに?ってここ、女子トイレだよ?石田の家はどうなったの?兄様には苛められたりされなかった?」
体を離して、あたしの顔をじっと見つめて、環が苦笑する。
「おいで、まずはここを出て、話をしようか?」
環に手を引かれて、誘われるように歩いて、受付にいる定員があたし達の姿を見て、驚いた顔をしてジロジロ見比べている。
「あっ、みんなに何も言ってない、ちゃんと、言って来なくちゃ」
思い出して、部屋へと戻ろうとするあたしの手を、環が離さずに笑う。
「僕がちゃんと、恵麻のふりをして話をしたから、大丈夫だよ?」
「やだ、環、何て言ったの?みんなに気付かれなかったの?」
「やっぱり帰るからって、ちゃんと、言っといた、誰も気付かなかったよ、制服なんか違うのにね?歌うのにみんな夢中だったのかな?」
「やだ〜、なにそれ〜」
二人で笑いながら、カラオケボックスを出て行く。
「あの定員さんの顔見た?可笑しい〜」
二人できゃっきゃっと笑いながら、手を繋いで街を歩いた。
通り過ぎて行く人達が、あたし達をジロジロ見比べて行く。