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兄達に抱かれる夜

第8章 君は誰かな?





ファーストフードに入って、ハンバーガーを一緒に食べる。




「こういうの、あんまり食べないから、新鮮だね?」



機嫌良さそうににこにこ笑う環、男の子の格好に何故だか慣れなくて、無駄にドキドキしてしまう。



回りには同じような、学校帰りの高校生がいて、何人かがこちらをちらちら見ているのが分かる。




環が見立つから……っ




ただでさえ、騒がしいファーストフード店なのにっ。



見覚えのある制服、近所の学生が、学校帰りに立ち寄る店だし。




落ち着かなくて、そわそわしてしまうのに……。




「……恵麻、君が元気そうで、良かった、その様子だと、一応は大切にされていたんだなって、わかるよ」




ハンバーガーを食べ終えたのか、包んでた紙をくしゃくしゃにして、優しい目をして見つめられた。



大切にされていたんだなって、自分でも思う。




大事な花嫁として、花嫁修業をさせられて、門限も厳しくて辛い時があっても、兄さまが優しくしてくれたから、大丈夫だった。




今日みたいな寄り道だって、兄様がいなければ、出来なかった事だから。




「兄様達のおかげかな?兄様達が優しいから、辛い時があっても、大丈夫でいられたんだと思うよ」



環が黙ってストローを口にくわえて、ジュースを飲み干す、ズズッ、音をたてて、紙コップを回している。




「恵麻は凄いね、何処に居ても、そうやって誰かに守られている、誰かの犠牲の上での事だと、思いもせずに、天真爛漫に笑っていられるんだね」




「……!
環………どういう意味?」




「僕が女の子だったらって、何度も思ったよ、石田の家には男は必要ない、女の子は有馬の家に嫁に出されるか、土御門家に出されるか、使い道があるからね、だけど、僕は違う」




「環………」




環の手をそっと握り締めた、紙コップを持つ手が震えている気がした。




お父様に、お兄様に暴力を受けていた環。




「石田家の当主なんて興味なかったのに、ちょっと出来るとすぐに酷く当たられて、僕は馬鹿なフリをするしかなかった、そんな僕でも、土御門家は僕を快く受け入れてくれたんだ」

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