兄達に抱かれる夜
第8章 君は誰かな?
「土御門家の人達は環を大事にしてくれるの?」
「当主の趣味で、女の子として、学校に通わせて貰っている。本当は男だと土御門家の人は皆知っているのにね、その変わっている当主と、僕はある契約を交わしているんだ」
「それは………大丈夫なの?環にとって、大丈夫な事なの?」
「僕にとってとても、簡単な事なんだよ、それが終わったら、自由になれるから……」
何だか胸騒ぎ、嫌な予感がして、環の表情も決して良いことじゃないような、気がして、不安で堪らなかった。
「環はあたしの事、恨んでない?」
恐る恐る聞いてみる。
だって、双子なのに、一緒にいられる事もなく、あたしだけ、みんなに大事にされて、それなのに、環は辛い思いばかりし続けて。
環があたしの目をじっと見つめて、フワリと微笑んだ。
何故だか背中がぞくりとした。
「何を言ってるの、恵麻がいるから今まで頑張って来れたんだよ、恵麻に会える事を夢見て、頑張っていたんだ、僕は恵麻が好きで、堪らないのに」
紙コップを離して、環の手があたしの両手を優しく包む。
冷たいジュースだったから、手が冷たい、だけど、熱い視線。
戸惑いながら、見つめ返して、ドキドキしてしまう、双子の兄なのに、可笑しいよ。
その時だった。
「はい、終了、帰るよ、恵麻、俺を置いて逃げるなんて、酷い女の子だね?」
突然、割って入る声、割って入る手があたしの手を、優しく掴んで、繋いだ手を引き離した。
「お前……っ」
「和兄様……っ」
環が席をガタン、音をたてて立ち上がり、和兄様を睨み据える。
あたしもつられて、立ち上がってしまう。
荒い呼吸をする和兄様、派手な髪をさらりとかきあげて、あたしの腕を掴む。
「……へぇ、なかなかの美形だね、どこの男が恵麻に手を出しているのかと、思ったよ、でも、とても、兄妹には見えない雰囲気だったね」
和兄様の目が鋭く、環を睨み据える。
睨み合う二人。
ハラハラしながら、和兄様の手にしがみつく。