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愛してるのに,愛せない(続)

第2章 傷

((千晃side))





みんなが来てくれて,だっちゃんが抱きしめてくれて,気持ちが軽くなった




それでもさっきまでの出来事は鮮明に覚えていて,1人でいたらまた襲われそうで怖かった




今は,誰かにすぐそばにいてほしかった







だっちゃんの家はどこか優しくて,静かで,落ち着けるような場所だった




まるでだっちゃんそのもの





日「夜ごはん,なにがいい?」

千「ごはん…いらない…」

日「ごはんはちゃんと食べないと元気でないよ?」



ママも昔,同じようなことを言っていた



千「ちょっとでいい…」

日「じゃあ〜,ちょっとまっててね」




だっちゃんは隣の部屋からブランケットとスウェットを持ってきて私に差し出した


日「今日はこれ使っていいよ。千晃には大きいかもしれないけど(笑)」

千「ありがとう」

日「ソファーに横になってていいからね」





たしかにスウェットはぶかぶかで,てるてる坊主に近い感じになってしまった


スウェットからはだっちゃんの香りがする



ブランケットをかぶって横になると,だっちゃんが近くにいるような安心感があった




包丁の規則正しい音に耳を傾ける




((なんでもできるんだなぁ…))




しばらくすると,ふわふわと湯気が舞う小さめの鍋のような器を持ってだっちゃんが歩いてきた



日「千晃の口に合うといいんだけど」



フタを開けると,色とりどりの野菜と綺麗な色をしたスープが入っていた



日「ポトフなんだけど,普段あんまり作らないからおいしくないかも(笑)」


千「いただきます…」




スープを口に運ぶと,なんとも優しい味が口の中に広がった



千「だっちゃん……すごい…おいしい…」

日「それならよかった!!(笑)」

千「だっちゃんは料理もできるんだね」

日「一人暮らしだからね〜。最初は下手くそだったよ(笑)」




ポトフの優しい味が傷ついた心に染み渡り,傷が少しずつ癒えていくような気がした

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