Baby love
第4章 近付けない。
M「・・・・・・」
じっと俺を見つめる大きな瞳が、俺の言葉を待っている。
早く言わなきゃ、そう思うのに自分の心臓の音がやけにうるさくてうまく言葉が出てこない。
朝、楽屋に入りたがらなかった理由が結局分からない。
俺に対する誤解がしっかりとけてるのかも分からない。
昔のように、俺を慕ってくれてるのか分からない。
本当は、幻滅されてるんじゃないのか?
・・・そんな奴に食事に誘われても、迷惑じゃないだろうか。
もちろん、これは俺の勝手な憶測で、潤がどう思ってるかなんて分からない。
そうだ、分からない事が多過ぎる。
なら聞けば良い。
ハッキリと、順番に聞いて行けば良い。
・・・・・怖い。
聞くのが怖い。
ヘタな事をして、嫌われたくない。
なぜこんなに怖いんだ。
自信を持てないんだ。
俺らしくない。
S「・・・・・・・。」
M「・・・俺、今日予定あって、急いでるから。」
・・・・・え?予定??
S「何があるんだ?」
言ってしまってから後悔する。
予定が入ってる日だってそりゃあるだろう、今まで俺が誘って断られた事が無かったのはきっとたまたまだ。
詮索なんかして、バカか俺は。
S「いや、何でもない・・・そうか、引き止めて悪かったな。」
M「ん・・・じゃあ、お疲れ。」
おう、と手を上げて見送ろうとしてふと思い付いてしまった。
相手は誰だ・・・?
あんなに男前で家事も完璧なんだ、恋人がいない方が不思議だ。
楽屋を出ようとしているところを慌てて呼び止める。
怪訝な顔で振り返る潤。
S「・・・デートか?」
M「・・・そうだよ。」
少しムッとした潤が、
じゃあね、と今度こそ楽屋を出て行ってしまった。
そのままバタンと閉まったドアを見つめたまま動けない。
潤に・・・恋人がいる。