
スケートリンクと溺愛コーチ
第3章 はじまりⅡ
練習が終わり、皆で話をしているとラファが迎えに来た。
皆にさよならを言って、ラファのところまで小走りで行く。
「乗って。」
ラファの車の助手席に座る。 家までは車で10分程度。
「ねえ、ラファ。」
「何?」
「どう思う?新しい子のこと。」
気のせいかもしれないけど、さっきから柚ちゃんのことを考えると胸騒ぎがする。
「ん~・・・ 筋はいいけど、まだまだだねぇ・・・。
どうして?」
「特に意味はないけど、なんとなく。」
「ふぅん・・・。あ、でも、昔の杏莉に少しだけ似てるかもね。」
・・・昔の、私・・・?
「あの頃はひどかったよねえ・・・(笑)」
フっと鼻で笑うラファをにらみ、昔の自分を思い出してみる。
ラファと出会う前、私は家族3人でロシアに住んでいた。
ロシアの血をもつ母と、日本人の父との間に生まれた私。
父も母もスケート経験者で、当然のように私もスケートを始めた。
最初のころは楽しくて楽しくて。
だけどある日、父と母は私のスケートの大会にくる途中で事故にあい死亡。
そのとき私は確か5歳。
そのあとは何もする気になれなくて、大好きだったスケートも避けるようにしていた。
祖母に誘われて嫌々行ったスケートの大会。
そこで私はラファと出会った。
そこからあとは、あまりよく覚えていない。
なぜかラファがコーチになって、毎日毎日、ひたすら練習。
ただがむしゃらにスケートに取り組み、気づいた頃には数多くの大会で優勝。
それだけじゃ足りなくて、進化を求めるために2人で訪れた日本。
そして、現在に至る。
