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愛すべき存在

第1章 愛すべき存在

 聞き慣れた声がした。春斗の声が。本当に来てくれた。悲しいわけでもないのに、何故か涙が頬を伝い零れ落ちる。

「春斗?」

「大丈夫か?」

「春斗が来てくれたから大丈夫だよ。ただ安心したの。春斗のことあの日、あんな風に拒んだのに……」

 私は続きを言おうとしたら私は温かいもの、否、春斗に包まれる。抱きしめられた。

「それ以上言わなくていい。待たせてゴメンな」

「春斗、少しずつ好きになるからね」

「うん、待ってる。じゃ、家に帰ろか? 送ってくよ」

 春斗はそういうと私から体を離して、手を繋いで話しながら家に送ってくれた。

 春斗がいてくれて良かった。心からそう思う。

 私は寂しくも幸せな気持ちで眠りについた。

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