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FRIENDs -ars短編集-

第4章 ここにおいで A×M

Aサイド


やっとのことで家に帰って
その人をベッドに寝かせる。


そこまではいいものの、
何をしていいかわからず
とりあえずおでこに冷えピタを貼った。


昨日あのあと、家帰らなかったのかな…

なんでこんな倒れるまで歩いて。


俺は寝ている自称ヴァンパイアの横で
正座をしてその顔を眺めた。


「おーい…」


返答なし。


吸血鬼と言うならば、牙でもあるんだろうか。


ほんの好奇心だった。


俺は返答のなかったその人の唇を
少し引っ張り歯を見てみた。


「…え。」


思わず声を出してしまった。

そこにはキランと光る牙があったのだ。


嘘…ホント、だったの?


俺は少し怖くなって背筋を震わせた。



他の特徴もないかと、俺はじっと顔を見た。


顔を真っ正面から見たくて、
上からその人の顔を見下ろす。


やっぱり、牙以外は普通の人間みたいだ…


確認はし終わったのに、
なんだか目が離せない。


あ、まつげ長いなぁ…


心の中で独り言をつぶやくと
その人が身じろぎゆっくりと目を開けた。

紫にも近い瞳と目が合うと
ドキンッと心臓が暴れ出して
俺は慌てて部屋から出ていった。


ドアをバタンと閉めると、
そのドアに背中合わせに立ち尽くす。


何…今の…

ドキンッて思春期の中学生じゃないんだから…


そう思いながらも、
火照った顔を冷やすことができず
俺は台所に向かい水を一気に飲んだ。


はぁ…


胸の中に何かつっかえた感じ。

どうにもそわそわしてしまって、
ソファのクッションに顔を押し付ける。


それにしても、綺麗な目だったな。


少し紫がかった黒目に、切れ長の目。

長いまつげ、キリッとした眉。



どうにも気になって、また部屋に入る。

そいつは再び目を閉じていて
その顔をじっと見つめる。








その夜から俺の胸の中の塊は
悪い腫瘍のようにどんどん膨らんでいった。

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