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FRIENDs -ars短編集-

第4章 ここにおいで A×M

Mサイド


…俺ってなんでこんなに運が悪いんだろう。



俺の住んでるボロアパートの
取り壊しが決まった。


しかもその数日後には面接の落ちたって連絡。

今回はご縁がありませんでしたって、
いつならご縁があるんだよっ!!


そんなことにさえキレてしまうほど
情緒不安定で、いつの間にか涙が零れていた。


またホームレスに逆戻り…



もうここまでか…

吸血鬼界に戻ろう。

俺はそう決心した。







「…ただいまぁ。……え?」



しょうがなく吸血鬼界に戻った俺。

その目に写ったのは、
小さな男の子を撫でる母。


「っ…誰…その子…」
「あら、潤帰ってたの。

…この子、あなたの弟よ。
ここの世界のプリンスは、
1年前からこの子に変わったのよ。
潤が帰ってこないから…」


…は?

何言ってんの。誰だよこいつ。


1歳くらいの小さな男の子は
声を立ててけらけらと笑う。


「…じゃあ、俺は……」

「ただのプリンスの親族ね。」


じゃあなんだよ…

父さんはこのことで呼び戻しに来て…


…なのに俺。



やっぱり俺、運が悪い。

いや、これが俺の運命なのかもしれない。


こうなるのは既に決まってた
…運命なんだ。



吸血鬼界に俺の居場所はなく、
仕方なく再び人間界に戻った。


そっか、俺家もないんだった…

今日は野宿かな、と中華料理店の裏道から
段ボールを盗んできて道の端に置く。


段ボールって、結構あったかいんだよな
なんて思い出す。


…あったかい。

でもその代わり、顔に冷えた風が突き刺さる。


眠ろうとして目を閉じた。

真っ暗な瞼の裏にあいつの顔が浮かぶ。


そうだ、あいつの家に…


…って、俺のことは忘れてんのか。


自分で消したくせに
その時の自分を殴ってやりたい。


勝手に涙が溢れてきて
段ボールを少しずつ濡らしていく。


もう、意識が離れかけた時だった。



「大丈夫ですか…?」


そう言う声が降ってきた。

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