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FRIENDs -ars短編集-

第4章 ここにおいで A×M

Mサイド


…あ。

聞いたことのある声に
上を見上げると、やっぱりあいつの顔。


優しそうな黒髪に。
純粋な瞳。唇。



吸い込まれそうになり、
次第にその顔が歪んでいく。


泣いていると気づいたのは、
そいつに触れられた後。

止まりかけていた涙が溢れてきているのだ。


「あ、の…大丈夫ですか…?」


首を傾げて俺を見る。

ドキンッと胸が鳴る。



あぁ、俺は、名前も知らないこいつに
“恋”をしていたのか。


今まで気づかなかった。
これが恋なんて。

相手は人間のうえに男。

恋なんてするはずがない。

好きになんてなるはずがない。


___でもそれはただの言い訳で。



本当はどうしようもなく好きなんだ。


君の名前を知りたい。

名前以上にもっと、いろんなことを知りたい。

年齢は?職業は?
彼女は…いるの…?


声には出せないけど、
まだまだ知りたい。話したい。





「もしかして、家…ないんですか…?」


かけられた言葉に、俺はこくんと頷く。


しゃがみこんだのか、
目の前にそいつの顔が現れる。


「じゃあ、俺んち、来る…?狭いけどね(笑)」


そう言ってくしゃっと笑うそいつは、
儚くて、切なくて、愛おしかった。


俺はそいつの優しさに甘え、
迷わず立ち上がり首を縦に振った。


「ありがとうっ…!!!」


思いっきり抱きついたそいつは
とっても温かかった。

また涙が溢れる。

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