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FRIENDs -ars短編集-

第1章 一方通行 O×N

Nサイド


午後から仕事で楽屋に入ると、
大野さんは翔さんの隣にくっついて座っていた。


翔さんの挨拶する声も、
聞こえたけど無視した。

無愛想だって思われたかな。

でも、そんなにくっつく必要ないじゃん。
肩とか膝とかが少し触れ合うくらいの距離。


俺がゲームをしていてもコソコソ喋って。
立ち上がったと思ったら、翔さんを振り返る。


ほんとなんなんだろう。

かと思えば俺の方に歩いてきて、
一緒に帰るお誘い。

いつもだったら飛び跳ねるくらい嬉しいけど、
今は素直に喜べなかった。



大野さんのお誘いに
きちんとした返事もしないまま収録が始まった。


収録中、後悔した。

なんで俺はこんなに喋るキャラなんだって。



何回も思ったけど、無理やり
明るい声を出して収録を進めるしかなかった。



「疲れてるんじゃない?大丈夫?」


ってJにも聞かれた。


大丈夫って答えたけど、
ほんとは全然大丈夫じゃない。


「辛かったら言えよ。」


って、なんでこの人はこんなに優しいんだろう。


それに対して大野さんは鈍感で俺には無関心。



なんで、俺、大野さんのこと好きなんだろう。



わからない。



でも


思い出したら、


目が合ったら。



ドクンって胸が跳ねて、体が熱くなって。

あー、やっぱり好きだなーって実感する。



俺は横にいる大野さんを見る。

どこかぼーっとしてる大野さんを見ると、
笑顔になれた。


でも、今は収録中。
笑うのは我慢するんだけど、
膝とか、手とか近付けて。


そうすると、翔さんと隣にいたときのこと
思い出して、大野さんからそっと離れる。




収録が終わって、
俺も大野さんもこれで終わりだから
約束通り一緒に帰ることになった。


マネージャーに言って一緒に乗せてもらって、
降りたのは大野さんの家の前。


来たこともなかったし、
どこにあるのかすら知らなかった。


そのマンションを見つめて
呆気にとられている俺に、
大野さんが話しかける。


「ほら、行くよ。」


そう言われて大野さんが歩いていく。
それに慌ててついていくけど、
急な出来事に、頭はまだついていかなかった。

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